必要な「教具」から「文具」への脱却

 では、こうした状況に対して学校側はどのように取り組もうとしているのか。GIGAスクール構想が進めているのは、小中高の校内のWi-Fi環境の整備と小中学校での児童生徒1人1台端末の整備の2点です。国レベルの大事業とはいえ、実際に取り組むかどうかは自治体次第で、2020年の2月までは「やらないかも」という声が実は多かったのです。

 それが3月以降、新型コロナの感染拡大に合わせて文部科学省が「学びを止めるな」を掛け声に後に伝説と言われるような呼びかけがなされたりするなど、取り組みの勢いが増しました。マスメディアで注目されるようになったオンライン学習に保護者が期待して、教育委員会や地方議会にGIGAスクールの早期実施を求める陳情が相次いだことも大きな後押しになっています。

 とはいえ、自治体による温度差はまだあります。文部科学省では、2019年の柴山プラン(通称)で構想を明らかにし、標準仕様も定めているのに、各自治体では細かな導入仕様や運用方針がまちまちで、せっかくの環境が生かされず、子どもたちの地域間格差が開く要因になりかねません。

 ところで、GIGAスクール構想に関連して、「ICT活用教育アドバイザー」や「GIGAスクールサポーター」という制度があります。「教育の質の向上に向けて、全国の自治体における学校のICT環境整備の加速とその効果的な活用を促進する」のがこれらの役割ですが、指南役たる大学教員や経験者、あるいはICT関連企業人材などといった人材の経験や知見が、どの程度有効かは正直なところ未知数です。

 なぜかといえば、わが国に限って言えば、学校単位ならばともかく、自治体単位でこれだけ大規模な1人1台の日常的活用で成功した事例は一つもないからです。つまり、学校の現状を何も変えずにそのまま引き継ぐようなやり方では、いずれ破綻するのは確実。何かを変えなければいけない。その何かを的確に見いだせるか否か、暗中模索の状態では、アドバイザーといえ、その人が持っている教育観や指導原則が大きく影響するでしょう。