「デジタル端末の文具化」を妨げる大人の事情

 パソコンやタブレットといったデジタル端末が文具であるとするならば、できるだけ子どもが自由に使えるような利用の仕組みを作らなくてはなりません。それを阻害しているのが、先生の考え方や時代にそぐわない規制などの「大人の事情」です。技術の進歩に追いつかない大人が、「デジタル端末の文具化」を妨げている。そうした学校が日本の大半を占めています。

 なぜそうなるのか。理由の一つ目には、先生があまりにも一方的に情報を与え、子どもの行動を統制・制限することにこだわりがちなことが挙げられます。学校で使う端末は、あくまでも操作方法や各科目の学習内容を理解させるための「教具」であって、指示した使い方以外は一切認めないという考え方です。

 万が一生徒が指示以外の“正しくない操作”でトラブルを起こしてしまったら、個別対応のために授業が中断するかもしれない。あるいは、勝手な操作を許せば、授業そっちのけで遊んでしまうかもしれない。だから、端末の“正しい使い方”から逸脱しないよう「必要以外の時には触らせない」ようしっかり管理するのです。

 簡単な調べ学習でも、検索結果の先がほとんどフィルタリングで見られないなんて話もあります。リスクを恐れるあまりオーバーブロッキングになってしまうからです。学校のパソコンで作った資料を外に持ち出すのも、家で作業したファイルを持ち込むのも許されません。学校パソコンのUSB端子は使えないようにしてあることも珍しくありません。

 理由の二つ目は、「勉強に必要なもの以外は学校に持ち込ませない」「ネットで生徒同士が勝手に連絡を取るとろくなことにならない」という生徒指導的な観点から、学校の内外で端末の自由な使い方を校則で制限する考え方です。

 そもそも、今の子どもの普段の生活には、当たり前のようにスマホが入り込んでいるのに、学校では堂々と使えないというのもいかにも不自然な話ですし、生徒たちが互いにLINEでつながっている切実な理由をすっ飛ばして、悪質な情報モラル講義で説教したり、一律に学校のルールで生徒のプライベートを“指導”するのもいかがなものでしょうか。

 理由の三つ目は、条例による規制です。最近、個人情報保護法制「2000個問題」として知られていますが、公立学校での個人情報の取り扱いは各自治体が条例で定めており、個人情報を入力した端末、校内のサーバーなどを外部のネットワークにつないではいけない「オンライン結合の原則禁止」が残っている自治体も存在しているということです。

 個人情報が入ったデータは、原則インターネットにもクラウドにもつなげない。となれば、そもそも「GIGAスクール構想」は実現するのでしょうか。