信州大学の不可解な対応

 宇都宮大学が2次試験中止を発表したのと同じ1月21日、信州大学はこんな“予告”をしていました。新型コロナに対する緊急事態宣言がいずれかの都府県で延長されたり新たに出されたりした場合、2次試験を取りやめる、と。

 実際に政府が10都府県の緊急事態宣言の1カ月間延長を発表したのは2月2日のことでした。 国公立大2次試験の出願は既に1月27日に始まっており、2月5日に締め切られるところでした。つまり、信州大のこの発表は、出願締め切り直前の出来事であり、受験生にとってみれば青天のへきれき、本来なら学長のクビが飛んでもおかしくないようなルール違反といえます。

 実際に取りやめたのは信州大の8つある学部のうちの松本市にある人文学部と経法学部に限られますが、同じキャンパスには理学部と医学部もあるわけで、なぜ学部により対応が異なるのか、受験生には理解しがたいかもしれません。本当は何がしたかったのか、おいおい明らかになっていくものと思われます。 

 少なくとも東京都心の私立大学は一般選抜を実施していますから、なぜ、この期に及んでこのような対応をしたのか、私には疑問が残ります。 

 宇都宮大の例で触れたように、2次試験を取りやめて共通テストの成績で合否が事実上判定されるようになると、地元の受験生には不利に働く傾向が強まります。内閣府のまち・ひと・しごと創生本部は、人口減少で疲弊する地方の活力を取り戻すために、地方大学・地域産業創生交付金を設けて、地元の受験生が地元の国公立大学を中心に進学することを促していますが、その動きに逆行してしまうかもしれません。あるいは、入学してきた「よそ者」をいかに地元に定着させるかという新たな課題が生じるかもしれません。

 また、共通テストだけで合否判定ができるのであれば、これまでの個別試験にはどのような意味があったのかを問う必要も出てきます。これら3つの大学は、学生の入学後の成績をしっかりと見極めて、1次試験(共通テスト)、2次試験(個別学力検査)で問うべき資質・能力のすみ分けを明確にして、アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシーに反映させることが必要でしょう。