教育する側を教育する仕組みが肝要
新しい学習指導要領で学校にプログラミング教育を導入すると言われても、本当に教えることができる先生がどれだけいるのか、疑問に思ってしまう。プログラミング教育が成果を上げるためには、教える側の体制作りが重要だ。
ライフイズテックでも、創業して最初にぶつかった壁は、教え手(=メンター)の不足だった。最初は大学の情報系の研究室を訪問し、ヘッドハンティング的にプログラミングを教えられる学生を呼び込んでいたが、中高生の参加者が増えるにつれ、その方法は限界を迎えた。そこでスタートしたのが、メンター育成の研修制度「ライフイズテック・リーダーズ」である。まずは、教育する側が学べる仕組みを作ったのだ。
ライフイズテック・リーダーズでは、IT技術、ファシリテーション、チームビルディング、デザイン、マネジメントの5つの能力を身に付けるため、100時間以上の研修(インターンシッププログラム)を実施している。座学だけでなく、グループワーク、謎解きのアクティビティー、開発や制作の実践もあって、参加する大学生たちが意欲的に取り組むことのできる内容となっている。10年間で累計約2000人がこの研修を受講し、中高生の力を育てるための技量を習得した。
メンターに要求されるのは技術力だけではない。特に重視されるのは、高いファシリテーション能力だ。中高生に教えるといっても、必要なのは正解を教える「ティーチング」の力ではない。彼らに寄り添いながら、一人ひとりの主体性や創造性を引き出し、作品を作る過程を支援していく「ファシリテーション」の力なのだ。
実際、ライフイズテックでは、メンターのファシリテーションによってたくさんの中高生が自分のオリジナル作品をリリースしてきた。決まった答えがない中で、中高生自身の「こういう作品が創りたい!」という思いを対話によって引き出し、具現化した成果である。
現在メンターとして全国で約400人以上の学生が活躍しているが、専攻は、情報系、機械工学とその他の理科系、デザイン・クリエイティブ系、文系がそれぞれほぼ同じ割合だ。ライフイズテックではアプリやWebの開発だけでなく、映像やゲームや音楽など15のコースを開講しているため、多様な能力を持った学生がメンターとなっている。大学卒業後は多くが日本の代表的なIT企業やスタートアップに就職し、20代のうちから起業に関わっているOB・OGも全卒業生の約5%に達しているという。
なぜ、このような大学生たちが、ライフイズテックに集まるのだろうか。