志願者数10万人超が8大学から2大学に激減

安田 志願者数の激減が大きな変化として表れたのが、一般選抜志願者数10万人超の私立大学の数です。2020年度は8大学あったものが、2021年度はわずか2大学になってしまいました。

後藤 上位20大学を見ても、前年より志願者を増やしているのは3大学(千葉工業大学、立教大学、龍谷大学)しかない。

安田 1位は13万5979人(前年比▲9371人)を集めた近畿大学です。1万人近く減少したものの、もう8年連続1位です。このポジションで抜いてくるライバルがいなくなってしまいましたね。

後藤 学内併願の追加受験料をタダにしたり、減免したりしているので、受験生は多くの学部を併願しやすいです。近畿大はそれだけではなくて、いろいろと話題性のあることをやっています。プレイステーションで一世を風靡した、元ソニー・コンピュータエンターテインメントの立役者である久夛良木健さんを、2022年度に新設する情報学部の学部長に迎えると発表しました。

安田 2位に浮上したのは千葉工業大の10万8707人(同+5438人)。共通テスト利用型は受験料を無料にしたことで志願者数を増やしています。ここは完全なダークホース。そもそも単科大学から始まってますから、誰もそんなにたくさん受験生が行くとは思っていませんでした。

後藤 宇宙とロボットでけん引してきました。元東大教授で惑星物理学の大家である松井孝典氏を2020年度から学長に迎えています。それ以前、2009年度には惑星探査研究センターを立ち上げていますし。看板となるような学長や学部長は学生を集める上で重要です。

安田 千葉工大は日本のMIT(マサチューセッツ工科大)という記事も出ていましたが。

後藤 東京工業大学もそのようなことを言っていたような。千葉のMITならば理解できますが(笑)。でも充実してきましたね。学部名にも早稲田との併願をイメージしやすい「創造」「先端」をつけていますし、「社会システム」もある。

安田 受験生に関心を持ってもらうためには入試改革だけではダメで、仕掛けは用意してあるのですね。大学の良さが知れ渡るのと同時にそういう話題があるとパッと火がつく。ただ、千葉工大の場合には学科間の格差があるのかもしれません。

後藤 複数の学部学科を受けているでしょうし、受験料が無料という要因もありますから、こうした学内併願が多い大学の場合には、増えるときは大きく増えますが、減るときには大きく減少します。