事例の内容に沿ってその場で議論を進める

調停委員役の「指示書」のイメージ
調停委員役の「指示書」のイメージ。模擬調停の議論に必要な事例の内容と審議のポイントのみが記載されている 出所:『教師もできるいじめ予防授業』より抜粋・改変
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 模擬調停はクラスごとではなく学年全体で行います。事前に「被害者代理人」「加害者代理人」「調停委員」の役を演じる生徒を募り、学年全員の前で実際に“調停”を行ってもらうのです。

 それぞれの役には、前もって簡単に模擬調停の流れを示した「指示書」(指示内容は各役で異なる)を渡しますが、基本的に「せりふ」はありません。役になりきってその場で考え、その場で発言してもらいます。

 ですから、演者にとっては、かなり実践的な演出となります。演者以外の人たちは、確認ポイントが記載されたワークシートを参照しながら模擬調停を見学します。

 被害者役や加害者役を置かずに“代理人役”として演じてもらうのは、本人役はいずれの立場でも精神的負担が大きいからです。

 議論の行方によっては演者が傷つく恐れもあります。この点代理人役は、本人そのものではありませんから、一定の心理的な距離を置きつつも“本人の利益”を考えることができるという、とても学びの得やすい立場です。

 演者の人たちには、さきほどの「指示書」と、やはり弁護士が事前配布する「資料」(議論対象事案の概要と、被害者・加害者の主張を簡単にまとめたもの)を熟読してもらいます。模擬調停当日は、お昼休みなどを利用してそれぞれの役に就く担当弁護士と作戦会議を行います。生徒さんたちはかなり緊張していることが多いので、弁護士は本来の力が発揮できるよう場を盛り上げていきます。