大学入試でも強まる早期決戦志向

――年内に合格を、となると、就職活動がそうだったように、高校の授業などへの影響も出てくるのではないですか。

後藤 いまの日程でもきちんと対応できているんじゃないか。教科の授業進度に左右されない選抜方式ですから。教科の試験を課すとなると工夫が必要になりますが、いまのところ共通テストを除き、2月1日以降に行うように文部科学省は決めています。

 とはいえ、2月1日以降では、合格発表との兼ね合いでとても窮屈です。ここは共通テストの出願と同様に、システム設計を引き続き検討しないといけない大きな課題です。私大団体も、本格的な記述型の試験を課せないですから困っています。

安田賢治
大学通信常務取締役兼情報調査・ 編集部ゼネラルマネージャー

安田 2020年はコロナ禍で部活の全国大会などもできず、休校期間も長かったこともあり、学業成績で評価される指定校の学校推薦型がすごく人気でした。総合選抜型も、結局、成績のみで評価されることになりましたから。

後藤 指定校の推薦枠を巡るミスマッチも増えています。高い評定値を持つ生徒が一般入試に挑み、推薦狙いの生徒の評定値が基準に達しないこともありますから、学校としても対応は大変です。指定校の推薦要件を見直すべきですね。一般選抜と同じように認知能力を基にした評定値を要件にしていては、元来の目的である入学者の多様性を確保できません。

 とはいえ、評定値は各高校のローカルルールの側面もありますから、ゲタを履かせているのではないかという大学側の懸念はどうしてもあります。その数値は一生付きまといますから、付ける高校側、個々の教員の負担はとても大きいです。

安田 評定値は高3とはいえ、1学期までの数値です。共通テストを1月ではなく、前年の秋に実施し、事実上の卒業試験にすればその問題はだいぶ解決すると思います。ただまあ、あまり前倒しにすると生徒がまじめに勉強しなくなることもありますが(笑)。

後藤健夫
教育ジャーナリスト

後藤 総合型選抜でも、きちんと勉強していない生徒は語れることがないですよ。私が思うに、言語を「思考を表現するもの」と位置付ければ、主要3教科は、自然言語(国語・英語)と人工言語(数学)の違いはあっても、すべて言語です。

 今日、芸術などを除けば、学問においては言語をもって思考を表現するので、主要3教科をきちんとやらないとだめなわけです。そんな話を以前したら、数学の先生が喜んでいました(笑)。

安田 いまの世の中、物事を証明していく数学の考え方は強く求められていますしね。

後藤 文学は鑑賞でしかないということでしょうか。それはそれで意味があるとは思いますが、共通テストの国語にしても、2つの文章を比較させるような出題がなされて、日常の生活での言語の活用能力を問うようになっています。

安田 22年度の共通テストでもそういう問題が出題されるでしょうね。
 
後藤 結局、地頭のいい子は特に対策をしなくても対応できるのですが。共通テストは卒業試験のようなものなので、やさしくしないと幅広い受験者層には対応できないですね。各大学の求めたい少し高度なものは個別の試験で課せばいいのですから。