生徒会で校則の変更が話し合われた
今回と次回は、「校則の変更」を材料に、議論を深めたいいくつかの論点を法の考え方に照らして抽出し、検討していきます。
■ケース1■ 校則を変えたい!(前編)
A中学校の生徒会に、「髪形や髪色を自由にできるよう校則を変えたい」という意見が寄せられました。A中学校の身だしなみに関する校則は大変細かく、違反者は厳しい指導を受けます。
これについて、生徒会役員たちが話し合いを始めました。最初にBくんが、「よく個性が大事って言われるし、髪も自由にできればいいね」と話すと、「まるで他人事みたい!」とCさん。
「天然パーマをからかわれるのでストレートパーマをかけたいけど、先生に『校則違反!』と言われて怒られると思うと、気が重くて学校に行きたくない」という生徒の声もあると訴えます。
実はCさん自身も、生徒会役員という立場上いままで口にしなかったものの、本音では「自分に似合う髪形をいろいろ試して自信を持ちたいから、校則を変えたいと思っていた」と言います。
一方、会長のDくんは、「そもそも校則は学校の大切な決まりなのだから守るべき。自分たちが入学する前から一度も変わっていないし、緩めるとなし崩しになって学校の評判が落ちるから、いまのまま変えるべきではない」という意見です。
Cさんは、「Dくん、それ本心なの?」と、不満げです。この3人の議論を皮切りに、生徒会では次第に意見のぶつかり合いが目立ち始めました。
そこへ職員会議を終えて現れた生徒会担当のE先生が、「生徒会の中で言い争ってどうする」と取りなします。そして、よく話し合って意見をまとめるよう促しました。
私は、弁護士として、いじめをはじめ、学校で起こる問題から子どもの生命や人権を守るための提言を行うNPO法人「ストップいじめ!ナビ」の理事を務めています。
上のケースは、私が「いじめ予防授業」や、いじめに関する講演活動などで全国の学校を訪問する中で感じた、“ありがちな出来事”を基に作ったお話です。実際には学校によって状況がかなり異なりますので、あくまでもケーススタディーとしてご理解ください。