日常生活で「個人の尊厳」を守る「法」
今日、教育改革が進む中で、多くの学校では、自ら問いを立て、周囲と協働して答えを探す「探究学習」が実施されています。自分と相手の「内心の自由」を尊重し、互いの主体性も尊重しながら議論を進める手法は、学校での探究的な学びはもちろん、身の回りのあらゆる問題解決にも活用できると思います。
私たちの日常生活には、至るところに法が存在しています。例えば、私たちが当たり前のように自分の家や仕事場にいられるのは、建築基準法などの法律で建物の安全が確保されているからです。安心して食事ができるのは、食品衛生法などの法律で食の安全が保護されているからです。
一方、建設会社などは、建築基準法に従った建物を販売し、利益を追求することができます。食品衛生法の安全基準に基づいて食品を製造する食品事業者などもしかりです。利益を追求する権利は、「営業の自由」として憲法22条1項で保障されています。
このように、法は常に私たちの身の回りにあって、人々のさまざまな権利・利益を調整しながら、私たち一人一人を尊重し、「個人の尊厳」を守っています。先に述べたように、法は、互いの権利・利益を調整する知恵の集積です。日常生活にこうした法の視点を少しずつ取り入れることで、「自分も相手も尊重する考え方」を身に付けていくことができるのです。
さて、「ケース1」の最後に生徒会担当のE先生が登場します。それまでは、生徒同士の横の関係だけで議論が進んでいましたが、今度は学校側、つまり「権限を持つ側」にある人が加わって、話し合いの構図に縦の関係が発生しました。
次回は、そうした縦の関係性、「力関係に差のある者の間で起こりがちなこと」について検討していきます。
>>(2)に続く