より高大接続に役立つ運用方法がありそうな大学入学共通テスト(東京大学本郷キャンパス会場 2022年1月)

強まる一般選抜入試回避の傾向

 これは少子化の帰結でもあるが、人間は易(やす)きに流れる。その結果、大学入学のハードルは年々低下していく。新型コロナ禍で開いてしまったパンドラの箱。そこで噴出したオンライン授業国立大の2次試験学校の施設設備(校舎・教室・机)などの問題が顕在化したいま、大学入試や教育の現場が元に戻ることはできない。

 思い返せば、2020年度が大きな転機となった。大学入試センター試験がその役割を終え、21年度から大学入試共通テストに衣替えする前年に、「一般選抜」を回避する動きが噴出している。もちろん、浪人も一掃される勢いだった。

 当初、この大学入試改革では、英語には民間4技能テスト、共通テストには国語と数学に記述式の導入がもくろまれていた。そのため、21年度入試を受験する学年の英語の授業は様変わりしていた。その様子を見ていた20年度入試を受験する学年の生徒には、自分たちはひたすら「読む」「書く」しか学んでいないのに、浪人することで「聞く」「話す」を求められたらたまったものではないというマインドセットができあがっていた。

 センター試験から共通テストへの転換も大いに不安だ。センター試験対策はしていても共通テスト対策に1年間で切り替えられるだろうか。そのようなことを考えると、間違っても浪人はできない。浪人したら現役生より不利になる。1ランク下げても、現役のうちに進学先を確保したい。そんな不安が、極端な安全志向を20年度入試の受験生に植え付けた。

 この安全志向に加えて、コロナ禍での一斉休校による学習の遅れへの不安、共通テスト実施を巡る混乱もあって、一刻も早く進学先を確保して安心したいという心理が生まれた。その結果、21年度の受験生も、「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」(旧AO)といった年内に募集がある選抜方式になだれ込むことになった。

 この傾向は22年度入試でも続いた。なぜならば、早く進学先が決まれば「受験期間」が短縮されて、残された高校生活にゆとりができると、先輩たちを見て知っていたからだ。確かに、どのような選抜方式で合格しようと、大学入学後は同等に扱ってくれる。ならば、一般選抜での学力試験への不安と負担を回避したいと思うのは、ごく自然ななりゆきなのかもしれない。

 大学側が入学定員を選抜方式別にどのように割り振るかにもよるが、18歳人口が減少する中で、年内入試の受験が増えれば、年明けの一般選抜の受験者数は減少し、競争は大きな緩和傾向となる。強気に受験すればよいことが頭では分かっていても、なかなかそちらには踏み切れない。特に学力がいま一つ足りない生徒は早く受験を終えたいため、こうした傾向は、今後も続くだろう。