受け答えの理想は「1つの話題で3往復」

ある大学が100人の受験生を一日で面接する場合を考えてみよう。10人の教員が2人1組で20人ずつ面接する。面接終了後は10人で話し合いの場が持たれ、各組がそれぞれ合格点を付けた受験生を報告する。面接の成績と提出書類の評価や課題小論文の評点などを総合し、最終合格者が決まる。つまり、面接官は、落とすための存在ではなく、受験生一人ひとりを推薦してくれる味方というくらいの認識で面接に臨んでいただきたい。
面接の際は、身なりは派手でなく制服かそれに近い清潔感ある服装で。話し方は、丁寧過ぎず、また過剰に論理的になり過ぎず、むしろ、自分の言葉(“タメ口”ではない!)で一生懸命伝えようとすることが大切だ。
そもそも、大人でも完璧に論理的に話せる人はごくわずかだ。論理性を気にし過ぎて「暗記」で対応しようとする受験生もいるが、面接では「聞かれたことに要点を絞って的確に答えること」が優先される。志望動機や部活動歴などはともかく、全ての受け答えを暗記で乗り切ろうとすると必ず立ち往生してしまうので気を付けよう。
逆に、質問の内容を無視して、自分の用意してきた「言いたいこと」と無理やりひも付け、ここぞとばかりに延々と話し出す受験生も多い。十数分という制限時間内で受験生のプラスポイントを探ろうとする面接官にとって、独りよがりの長過ぎるアピールは迷惑以外の何物でもない。
複数の大学入試担当者に聞いたところ、「もっともらしいが、マニュアル通りの受け答え」をする受験生には、人となりやとっさの対応力を見るために、あえて提出書類の内容とかけ離れた質問をすることもあるという。だが、こうした想定外の問いには「どう答えてもよい」(ある大学の教員)。
要するに、どんな会話であっても基本は相手とのキャッチボール。面接では面接官と受験生が3回ずつ発話し、計6回のキャッチボール(=3往復)ができることが一つの理想形といわれる(図2参照)。ただし、「最後に何か質問はありますか」と聞かれた場合の質問と、それに関する自分なりの意見はある程度用意しておこう。「特にありません」では、熱意がないと思われても仕方がない。
筆者は、高校生に入試面接に臨む心構えをセミナーなどの場で伝える際、最初に「異性と初めてデートするような意気込みで!」という例えを使うことがある。すると、意外性からか、関心を突いたのか、彼らの視線が一斉にこちらに向いた。「初めて会う大学の先生を前に、自分の考えを受け入れてもらうようアピールし評価を受ける」ことは、高校生にとって相当な非日常的期待感や緊張感を伴う。
そうした緊張感に対処できるよう、受験が近づいてきたら保護者は面接官役となって子どもの面接練習に協力する機会を持っていただきたい。子どもが本番で「自分らしさ」を出せるよう、子どもを最もよく知る親や保護者の支援は不可欠だ。