文部科学省が突然、大学に「入学金の負担軽減努力」を通知した

 親世代にも、自分の親に申し訳ないと思いながら“すべり止め”大学に入学金を払ってもらった経験を持つ人は少なからずいるだろう。それほど昔から続いてきた“慣習”だから、今度は自分の子どものためと納得しよう……とはいえ物価上昇も著しい今日、やはりなかなか腑に落ちない。そんな迷いを払拭するきっかけとなり得るのだろうか、25年6月、文部科学省は全国の私立大学宛てに一通の通知を発信した。

 内容は、私立大学に対して「入学料に関する学生の負担軽減」(※1)を促すもので、受け取った大学にとってはまさに予期せぬ出来事だった。文部科学省が毎年公表する「入学者選抜要綱」が、項目の中のひとつとして同様の趣旨に触れたことは過去にもあったが(※2)、同省によれば入学金の負担軽減のみを単独で通知するのは今回が初めてであり、まさに異例ともいえる措置だった。

 具体的には、入学金の額や納付時期に関する趣旨の説明、入学金の額の抑制や入学を辞退する合格者への負担軽減のための努力を各大学に求め、「入学料を納付する時期を複数回設定するなどの時期の設定の観点など様々な観点も考慮することが望ましい」と結んでいる。

 この通知が発信された理由には、教育費の増加や大学進学率の伸び、入試方法の多様化などを踏まえ、「入学金の二重払い」の問題が改めて社会問題として意識されるようになったことが背景にあると考えられる。25年の通常国会でも、複数の国会議員が二重払いの問題を質問に取り上げ、その是正を提言した。

※1「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」(文部科学省、PDFに遷移)
※2 参考資料「令和4年度大学入学者選抜実施要項」(文部科学省、PDFに遷移)