志願者が増える年内入試、一般選抜への影響をどう測る?
大学受験の話題に「年内入試」という言葉がよく聞かれるようになったのは、大学入試改革がスタートした2020年ごろからだ。多面的評価による入学者選抜を国が推奨し、それを受けて、各大学は、年内に実施する総合型選抜や学校推薦型選抜での入学者割合を徐々に増やしてきた。
さらに25年度入試において、東洋大学が首都圏の大規模大学としては初めて「英語と国語」または「英語と数学」の基礎学力試験のみで合否が決まる公募型推薦入試を24年12月に実施し、2万人に及ぶ志願者を集めたことが話題となる。
文部科学省は従来、「学力試験の実施は年明けの2月1日以降」である旨を「大学入学者選抜実施要項」で通知していた。とはいえ、“学力テストを課す”年内実施の推薦型選抜は、関西圏の私立大学では相当以前から実施されていた経緯がある。
高校側からすれば、年内入試が学力テストで受験できることで受験指導がしやすく、大学側も受験生の基礎学力の把握が可能になることから、著者は、特に高校の教育現場から学力テストを課す年内入試を推す声を幾度となく聞いてきた。
結果として、文部科学省は26年度入試から“条件付き”で学力テストを課す年内入試を認めることとなる。26年度の「実施要項」(※3)には、「年内に学力検査を行う場合、小論文・面接・実技検査や志望理由書、学修計画書などを必ず組み合わせて丁寧に評価」する旨が追記された(第10回参照)。
前置きが長くなったが、学力テストを課す年内入試が容認されたことで、年内入試の志願者数は、今後も増えていくことが推測できる。さらに言えば、学校推薦型選抜の募集人員には、付属校からの内部進学も含めて入学定員の5割を超えない(※3)という縛りがあるが、総合型選抜は対象外だ。
よって、大学は、9月から出願を受け付ける総合型選抜で相応の入試者を確保し、11月出願の推薦型選抜で入学定員の5割を超えない数の入学者を確保するための二段構えで年内入試の合格者数を決定する。その後、入学定員までの残り枠と、併願校に流れる年内入試合格者数を勘案して、一般選抜の合格者数を決めるのが一般的だ。
ただし、中には、清泉大学(長野市)が25年4月に新設した人文社会科学部のように、24年に実施した総合型選抜と学校推薦型選抜などで入学定員を満たす合格者数を出し、急きょ25年1月以降に予定していた一般選抜を中止した例もある。
同大学は特殊な例であるにせよ、年内入試への極端な傾斜は一般選抜の予測を困難にする要因となる。模擬テストでA判定だった大学を一般選抜で受験した生徒が不合格、かたや、学科成績がさほど抜きんでていない生徒が総合型選抜で予想外の難関大学に合格するなど、“読めない”ケースが教員現場で散見されているのだ。
その“読めない”動きを高校教員はどう予測したのか。「アロー短観」で見てみよう。
※3 「令和8年度大学入学者選抜実施要項」(文部科学省、PDFに遷移)
