年内も年明けも志願者数が増える難関・上位大学
最初に、入試難易度が「難関・上位」といわれる、早稲田、慶應義塾、上智、東京理科、学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政の各大学に関する「短観」集計グラフを3ページに掲載した(2025年8~9月時点の予測、以下同じ)。
例えば、A大学の志願者数が「増えそう」と答えた回答者数が全回答者数の55%、「減りそう」と答えた回答者数が全回答者数の45%の場合、「55%-45%=プラス10%」、逆の場合は「マイナス10%」と表される。
この大学グループは、上智大学と学習院大学を除き、年内入試と年明け入試で共に志願者が増加すると予測されている。また、明治大学以外は年明けよりも年内のほうが伸び幅が大きいという予測だ。
上智大学は、コロナ禍の際に外国語系学部を看板に掲げる大学が軒並み敬遠された影響がいまだに続いているのか、一般選抜の志願者数が減るとする予測が、増えるとする予測を上回った。学習院大学は、26年度に新設学部を開設するものの、大学自体の刷新感と結び付きにくい印象がある点で、同様の結果となったのではないだろうか。
なお、グラフは未掲載だが、芝浦工業、東京都市、東京電機、東京農業、工学院、千葉工業の各理数系大学でも、東京都市大学、工学院大学を除き、年内入試と年明け入試で共に志願者が増加するという予測結果だった。
都立高校で35年間教壇に立つ進路指導担当教員は、「少子化の影響からか、ここ2~3年は従前よりも一般選抜で難関・上位大学に合格しやすくなったと実感しています。生徒には自分の想定より難易度の高い大学にチャレンジするよう強気の指導をしています。ただし、年内に合格通知を手にして早期に進学先を決めたいと考える受験生は増える一方です。また、入試と受験生の“相性”が結果を左右しやすい総合型選抜は、一般選抜以上に“逆転合格”が起きやすいこともあって、今後は上位校ほど総合型選抜による入学者割合が増えると見込んでいます」と語る。
「短観」に見られる予測は、実際の志願者数の傾向に近いものなのか、あるいは乖離しているのだろうか。単純比較はできないが、参考までに主要大学の25年度「入試別入学者割合」(豊嶋継男事務所調べ、以下同じ)と比べてみた。
早稲田、上智、東京理科の難関大学グループ(慶應義塾は未公表)の入試別入学者割合は、「一般選抜+共通テスト利用選抜」(年明け入試)が、3大学平均で61.3%、「総合型選抜+公募制・指定校推薦選抜」(年内入試)が同32.8%だった。残り5.9%は「付属校からの進学」という内訳である。
学習院、青山学院、中央、法政の上位大学グループ(明治は未公表、立教は一部未公表)の入試別入学者割合は、「一般+共通テスト」が4大学平均で57.7%、「総合型+公募制・指定校推薦」が同29.8%、「付属校」が同12.4%だった。
一般選抜の難易度が一定以上の大学は、公募制推薦選抜を実施しない、実施してもごく限られた枠しかないケースが大半である。であれば、「短観」が年内入試の伸びを予測する対象は、指定校推薦を除くと総合型選抜ということになる。
先ほどの都立高校教員のように、一般選抜では比較的合格が得やすくなったという意見がある一方で、別の教員からは、総合型選抜の難易度が相当高くなっているという声も届いている。26年度の総合型選抜も、一般選抜に匹敵するか、それ以上の難易度であったことが推察される。
