観光業界を目指す受験生は「観光学部」だけ受験?

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大学受験は1年後の春先、受験する大学・学部を決める基準は? イラスト:PIXTA

「どの大学のどの学部を受験するか」――。模擬試験もこれからで偏差値も分からない春先のこの時期は、まだ漠然としている受験生がほとんどではないだろうか。経済学部と経営学部はどこが違うのか、法学部は弁護士になる人だけが行く所なのか……?

 医師になりたいから医学部へ、絵画が好きだから美術大学を目指すなど、就きたい職業や好きなことが明確な場合を除き、たいていは大学での学びの内容をとりあえず横に置いておいて、出題時期の偏差値や競争率を基準に受験する大学・学部を決めるのが一般的なやり方かもしれない。

 だが、「とにかく偏差値の高い大学・学部を目指す」だけでは、入学後のミスマッチにもつながりかねない。よって高校では、受験する大学・学部を決めかねている生徒に「将来何になりたいか、どの方面に進みたいかをまず決めてから受験する大学・学部を選ぶ」という指導が行われている。

 確かに、医学部のような、大学で専門課程を履修し国家資格を取得することが必須の職種に就きたいならそれは当てはまる。問題は、「大学卒業後の進路から決める」をあたかも唯一無二の選択方法であるかのように、そうでない学部にも当てはめることだ。高校を訪ねた折「受験学部選択法の一人歩きでは……」と思わざるを得ない光景に、著者は幾度となく出くわしたことがある。

 例えば「将来は観光に関わる仕事に就きたい」という生徒に「観光学部」の受験を勧める場合。立教大学、東海大学、東洋大学、玉川大学……など、首都圏の私立大学だけでも「観光学」を冠する学部を持つ大学は数多い。地域政策学部や経営学部などの中に「観光科学科」「観光専攻」「観光コース」……を置く大学を合わせるとその数はさらに増える。

 かくして、受験生は「観光」と名の付く学部を中心に志望大学・学部選びを始める。大切なのは、将来「観光を通じて何を実現したいか」なのだが、多くの高校ではそこまでの探究活動を行っていない。特に今の受験生世代は費用対効果(=コスパ)を重視する。「観光業界に行きたいなら観光学部」という教員の指導を、意外にもすんなりと受け入れてしまうのだ。

 もちろん、観光学部の受験は大いに結構だ。しかし、実際は、観光学部出身者ばかりが観光業界に就職しているわけではない。一口に観光業界と言っても、さまざまな能力を持つ人の力で成り立っている。保護者世代なら認識しているこんな常識も、社会を知らない子どもには理解できていないことが結構あるのだ。

 大学で外国語のスキルを磨きたい、国際交流の経験を積みたい、それを生かせる場が観光業界だと思うのなら、むしろ、外国語学部や国際関係学部に行った方がよいと思う。観光地の地域政策に関心があるなら地域政策学部や法学部、経済に関心があれば経済学部や経営学部に進む道もある。交通インフラの構築や整備に関心があれば、工学部など理数系に進んで観光業界に入る考え方もあるだろう。

 卒業後の進路から受験する大学・学部を選択するならば、本来は「今の自分の興味関心が大学での学びや進路とどう結びつくか」を考える過程が必要なのだ。教員や保護者は、受験生が大学・学部を選ぶ際に視野を狭めてしまわぬようアドバイスをしていただきたい。