「おはようございます!」。詰め襟の学生服を着た生徒たちが校門にいた取材陣に気付き、顔を向けて堂々とあいさつをしてくれた。校訓である「強く 正しく 大らかに」を体現する、爽やかな礼儀正しさが印象的だ。
「“強く”は心身共に強く、大事な人を守ることができる力、“正しく”はルールを守って行動できる力、“大らかに”は他人を思いやり、さまざまな意見を受け入れる力を意味します。自由な遊び心とスマートさを兼ね備えた人間を、中高6年間で育てています」と語るのは、中学の原田学教頭だ。
生徒が伸び伸びと個性を発揮して認め合い、和気あいあいと過ごせる大らかな環境は、男子校の豊山ならではだ。異性の目を気にせず、男子特有の緩やかな心の成長と、真っすぐな競争意識、興味・関心を大切にして育つことができる。また思春期の男子はプライドが高く、異性の前で叱ると屈折してしまうようなことがあるが、男子だけの中では素直に受け止められたりする。そこに、多くの男子がいるからこそ、それぞれの「好きなこと」が否定されることなく、何事にも全力で熱中できる環境がある。
一方で、上級生が下級生の手本となって規律を示す硬派な風土も垣間見られる。
自らも日大豊山OBである高校の梅田髙司教頭は「先輩後輩の絆が強く、大らかさと規律を両立するのは本校の伝統です。卒業後も教員へ相談や報告に訪れるOBが多く、在校生の進路指導にも協力的です。私もそうですが、この学校で多くの仲間と過ごした思い出が宝物となっています。また、保護者の学校への愛着も強いと思います」とその持ち味を語る。
中学入学時には教員から保護者へ「他の生徒もわが子のように思い、ともに育ててほしい」と呼びかけ、家族ぐるみの友情が育まれる。
「中高約2000人との連帯感、さらにOB・保護者の力も借り、6年後に『豊山でよかった』と全員が思えるよう教員一同は努力しています」と原田教頭は熱意を語る。