教育イノベーション
エコシステムを構築
染谷昌亮センター長は、BSICE設立の理由について、「これまで、本校はDDコースの導入やSTEAM教育プログラムの実施など、新しい教育手法に取り組んできました。その結果、進学実績の向上や、受験生からの評価向上という成果が出ています。しかし教育はビジネスではなく、社会全体で子どもたちを育てるためのもの。私たちの学校で培った知見を、単に自校の発展のためだけに活用するのではなく、日本の学校教育全体と共有すべきだと考えたのです」と説明する。

学校併設という形にした背景には、学校教育と学術研究のギャップがある。多くの教育研究機関は学校現場から距離があり、現場の実情に即した研究が行われにくい。そこで、教育現場に隣接する形で教育機関を設置し、実践と研究を融合させることにしたのだ。

同センターでは、「教育イノベーションエコシステム」を推進し、外部の研究者や企業・大学などと連携しながら、新しい学びの在り方を模索する。具体的には、プログラムパートナーを募って新しい教育プログラムを開発するほか、リソースパートナーの協力を通じて、学校の枠を超えた教育機会を提供していく。

具体的な研究プロジェクトとしては、企業や研究機関と連携してリアルな社会課題に取り組む学習プログラムを構築する「プログラム開発」、次世代の教育者を育成して教員の働きがいを向上させる「教員養成・支援」、開発したプログラムや授業の効果をデータで測定し、改善を図ることを目的とした「教育効果測定」の三つの部門を設けている。

文大杉並では同センター立ち上げ以前から、すでに複数のプロジェクトを実施している。例えば「プログラム開発」では、トータルメディア開発研究所や国立科学博物館と提携し、博物館を活用した探究学習プログラムを開発。また生徒主導で農林水産省の補助金を取得し、有機農家の協力を得て“オーガニック給食プロジェクト”を実施した。

さらに「教員養成・支援」では、文大杉並が提携するカナダ・BC州の教員と授業デザイン研究会を開催して、コンピテンシーベーストラーニング(学ぶ内容よりも、学ぶ目的を重視する学習法)の導入を図り、AIウオッチを活用して教員のストレスや生徒の心理状態をリアルタイムで把握、教育現場の環境を改善する試みなどを行っている。