復習を最高のタイミングでやろうと思っていても、できないことはたびたび起こる
成績アップのためには復習が欠かせません。わからなかったことやできなかったことを復習するのは当たり前の正攻法ですが、良いやり方をしている子は驚くほどに少ないものです。私は記憶術や勉強法についての本を書いてきましたが、その中で最も重要なことを1つ挙げるのとすれば、「復習をする」に尽きると思います。
そして、その復習をより効果が高いものにするためには、「いつやるか」「どうやってやるか」といった工夫が大切です。
例えば、「復習は一気にやらずに分散させてやった方がいい」「忘れかけのタイミングが良い」「インプットとアウトプットのバランスが大事」などといったことです。
ところが、受験生活の中では「分散させてやろう」「忘れかけのタイミングでやろう」と思っていても、進級にともなって1週間のリズムが変わったり、季節講習で普段とリズムが変わったりすることで、思った通りの「最高のタイミング」で勉強できないことがたびたび起こります。
- やることが多過ぎて、復習するのを忘れていた
- 予定より時間がかかってしまって解き直しができなかった
- 疲れちゃってやる気が起きなかった など
こういったものが、私たちが子どもからよく言われる「できなかった理由」の典型です。果たしてどうすれば子どもに「良い勉強」をさせてあげることができるのでしょうか?
心理学者ペーター・ゴルヴィツァーの行った実験
そこで今回ご紹介するのが、ドイツのコンスタンツ大学の心理学者ペーター・ゴルヴィツァーの行った実験です。
ゴルヴィツァーは、クリスマス休暇の直前に学生たちに調査への協力を依頼しました。調査のテーマは、「現代人の休暇の過ごし方」です。協力すると言った学生には、「クリスマス休暇をどう過ごしたか」についての詳しいレポートを帰省先で書いて郵送するように依頼しました。投函期限は、「クリスマス当日から48時間以内」でした。
ゴルヴィツァーは、学生のうちの半分に、もう1つお願いをしました。レポートを書く予定の時間と場所を具体的に決めてもらったのです。学生はその場で時間と場所を紙に書き、ゴルヴィツァーらに渡しました。その結果、予定を作成しなかった学生のレポートの提出率は32%だったのに対し、予定を作成した学生の提出率は71%となりました。
「○○を作ること」の○○とは?
さて、この実験結果から、私たちはどのような教訓を取り出せるでしょうか。
1つは、「やる気はあっても行動できないことはある」ということ。このレポートは任意の課題です。協力すると言った学生たちは「やる気はあった」のですが、3人に1人しか提出できていませんでした。それは、受験生の子どもたちも同じです。子どもたちもみな、成績を上げたいと思っています。そのために勉強をしたいとも思っています。だけど、それが実行できないのです。
ただ、それは人間なら当たり前のことでもあります。だって優秀な大学生たちですらこのありさまなのですから。
もう1つは、「予定を立てると行動が変わる」ということです。「いつ」「どこで」レポートを書くか。たったそれだけのシンプルな予定を決めるだけで、レポートの提出者は倍以上に増えました。しかもこの実験では予定を書いた紙は提出してしまっていて、学生たちの手元にはありません。実験をしたゴルヴィツァーやそのスタッフたちからのリマインドもありません。それでもレポートを書いた学生たちが大幅に増えたのです。
いつかやろうと思っていた結果、その機会を逃してしまうことは、大人でも子どもでもよくあることです。いつやるかを決める、たったそれだけで、行動の機会を逃さなくなるのは素晴らしいことですよね。
ということで、もう「○○」が何かおわかりですよね。「予定」を作りましょう。1週間の中で、いつ何の勉強をするのか、スケジュールを立てましょう。そうすれば、子どもの行動は、かなりの確率で良い方向に変わります。ぜひチャレンジしてみてくださいね。