成績が上がらない理由① 自習の時間を確保できていない
塾に通っているのに成績が上がらない理由の1つ目は「自習の時間を確保できていない」です。塾に行きさえすればよい、授業を受けてさえいればよいと思っている、ということです。残念ながらこうした子がとても多いのです。
当たり前ですが、塾に行って授業を受けただけでは、習ったことができるようにはなりません。内容を理解し、記憶に定着させるためには、自分で問題を解いてみて、できなかったことは再度解説を見たりノートを見たりして、復習をすることが必要です。そうしたアウトプットをしないと、塾で授業を受けて「なるほど、わかったぞ」という感覚になっても、いざ問題を解こうとしたときに「あれ、どうやるんだっけ?」となってしまうのです。ですから、授業時間外の家庭学習が重要になってきます。
こうした「やってみる経験」が必要なのは、人間の「学習」全般に言えることです。料理本や料理動画を見ただけでは、料理は上達しません。実際に自分で材料を用意して、作っていく中で上達していきます。プロサッカー選手の華麗なプレーを見ただけでは真似できません。何度も練習をするから徐々に身につけていくことができるのです。
これは勉強も同じです。塾で宿題が出される理由も、「わかった気がする」で終わらせないためです。塾によっては宿題の量が多くて全部こなすのが大変なこともあると思いますが、授業中に扱った問題だけでも再度解き直し、必ず「できる」という状態まで持っていきましょう。
先ほど人一倍頑張らないと、ほかの子を追い抜いて順位を上げることはできないと言いましたが、現実的に言えば本当の意味で宿題をしっかりできている子はあまりいません。中学受験において、特に4・5年生の子だと、宿題をやっていないとか、やっていたとしてもやりっ放しで、間違えた問題の解き直しをしていないことがほとんどです。
ですから、宿題をちゃんとやるだけで、人一倍の努力になります。4・5年生のうちに、しっかり宿題をやる習慣ができるようにサポートしていきましょう。もし、ほかの習い事などがあり、なかなか復習の時間を確保できないということであれば、習い事の整理をする必要があるかもしれません。
あるいは、個別指導や家庭教師でサポートすることで、宿題をこなす時間が短くて済むようにしてあげるのも良い方法かと思います。先生からヒントをもらったりして適切に誘導してもらえば、問題を解くのも、解き直しをするのも早く終わり、負担が軽くなります。
ただ、教えるのが下手な先生だと、授業でインプットばかりして、逆効果になってしまうこともあるのでお気を付けください。しっかり先生と意思疎通をして、復習を徹底できるような進行にしてもらってくださいね。
また、時間に余裕はあるけれど時間の使い方があまり上手でない子に対しては、保護者の方が復習のスケジュール決めを手伝ってあげるとよいと思います。復習はそれだけ優先順位の高いことだと心得ておきましょう。
成績が上がらない理由② 素直じゃない
塾に通っているのに成績が上がらない理由の2つ目は「素直じゃない」です。これは、先生の指導になかなか従わず、我流を貫こうとするということです。「まずは言われた通りにやってみよう」という気持ちがあまりない状態です。やはり、成績の上がる生徒に共通しているのは、「まずは先生のやり方を真似して解いてみよう」「この前指摘されたから、途中式はちゃんときれいに書き残しておこう」など、素直であるということです。
「守破離」という武道の教えがありますが、簡単に説明すると、まずは師匠の教えを忠実に守り、徐々にそれを発展させ、やがては独自のやり方を確立していく、という考え方です。
私も教育者として、ときには学習者としても大切にしている考え方なのですが、よほどの天才タイプでない限り、まずは師匠の真似をした方が早く成長することができます。塾には、これまで指導してきた生徒の成功事例や失敗事例、それをもとにした効率的に学習するノウハウや考え方が多くあります。独学では決してたどり着けない、自分に合った勉強法や成績アップに必要なことを授けてもらうのが、塾に通う大きなメリットです。
そうした先人の知恵を無視して、我流で一から考えてやり方を発見しようとすることは「車輪の再発明」と言われ、とてもバカなこと・無駄なこととされています。絶対にしないようにしましょう。
成績が上がらない理由③ 方向性が頻繁に変わる
最後に、塾に通っているのに成績が上がらない理由の3つ目は「方向性が頻繁に変わる」です。これは、先ほどまでの話とは打って変わって、素直すぎるが故とも言えますが、ことあるごとに方針を変えようとするのは要注意です。例えば、転塾を繰り返したり、使用する教材や問題集をすぐに変えてしまったり、模試の結果が返却されるたびに志望校を変えようとしたり、といったことが挙げられます。
先ほどと関連する内容でいうと、他人からのアドバイスであっさりやり方を変えてしまうのも同様です。これは子ども本人よりも、どちらかというと保護者の方が当てはまることかもしれません。中学受験をする周りのママ友・パパ友からの情報に振り回されて、すぐに方針転換をする方がよくいらっしゃいます。残念ながら、自分の中に軸がないと成績は上がりません。
「1ヶ月間はこのやり方でやってみよう」「6年生の秋までは第一志望を変えずに頑張ってみよう」など、軸を持ったうえで一定の期間取り組むことが大事です。
短期間ではなかなか成果は出ません。どんな方針・やり方が合うのかは実際にやってみないとわからないことがほとんどですし、それが合っていた・良かったと判断できるまでにはやはり一定の期間が必要です。
短期間でむやみやたらに方向性ややり方を変えてしまうと、かえって成果につながりません。もう少し続けていれば成果が出たはずなのに、その機会を逃してしまうこともあります。子ども自身の「継続できた」という実感や自信にもつながりにくいのです。
大事なのは「何を選択したか」ではなく、「選択した後でどう取り組むか」です。どんな選択をしても、それを「正解だった」と思えるように取り組めば、間違いなく成果につながります。一度決めた方針ややり方で、まずは一定の期間頑張ってみるようにしましょう。
まとめ|塾に通っているのに成績が伸びない理由
中学受験のために塾に通うというのは、それなりの時間とお金を投資するわけですから、塾に通うからには、そこで得られる最大の成果を得たいと思うのは当然です。そのためには、保護者とお子さんの能動的な努力が必要です。塾はディズニーランドではありません。そこに行くだけで夢を叶えられたり、望む何かを得られたりする場所ではありません。お金を払えば幸せな未来を売ってくれるというようなこともありません。
私たち指導者も、生徒の学力を伸ばすために精一杯サポートしています。けれど、私たち塾はすべての子を精一杯サポートしていますから、塾のサポートだけでは「同じ塾のほかの子を追い抜く」ことは不可能です。中学受験において、お子さんの目標達成には、本人の努力と、それを引き出すご家庭のサポートが必要不可欠です。今回お話しした3つの内容のうち、1つでも心当たりがあれば、改善していきましょう。