授業を受けるだけでは無意味!?問題演習で差がつく

 さて、結論から言ってしまうと、今回お伝えする「差がつく勉強法」は『問題演習をする時間を確保しよう』ということです。

 そんなの当たり前だと思いますか?しかし、毎週毎週新しい単元を習い、日々宿題に追われる受験生たちの中で、その当たり前のことがちゃんとできている子がどれだけいるでしょうか。はっきり言って、できていない子のほうが圧倒的に多いです。

 だからこそ、ここで「差がつく」ことになります。ましてや、連日授業があるとなったらなおさらです。授業を受けて、勉強をした気になって、演習を後回しにしてしまう。そして習った内容をすっかり忘れる。そんな受験生がたくさんいます。

 その「授業を受けるだけ」ということが、どれだけ意味がないかを教えてくれる、わかりやすい教育心理学の実験結果をご紹介しましょう。

一見要領がよさそうに見えても実は遠回り?実験からわかるアウトプットの重要性

 パデュー大学のカーピック博士が、ワシントン大学の学生を対象にスワヒリ語を40単語覚えてもらう実験を行いました。繰り返しテストをしながら覚えてもらうという実験です。学生たちは2つのグループに分かれ、一方は「間違えたものがあったらすべて覚え直し」、もう一方は「間違えたところだけを覚え直し」というルールでインプットを行います。

 そして、それぞれのグループをさらに半分に分け、一方は「再テストをするときにはすべての問題を解き直し」、もう一方は「間違えたものだけを解き直し」というルールでアウトプットをします。つまり組み合わせとしては、

  • A:すべてインプット/すべてアウトプット
  • B:すべてインプット/間違いだけアウトプット
  • C:間違いだけインプット/すべてアウトプット
  • D:間違いだけインプット/間違いだけアウトプット

の4つになるわけです。

 カーピック博士は学生たちに、満点が取れるようになるまでインプットとアウトプットを繰り返させました。どのグループもすべて覚えるまでにかかった回数はほとんど変わらず、みんな4~5回も繰り返せば満点が取れるようになったようです。

 時間や手間という点では、間違えたものだけインプット・アウトプットをするのがよいやり方だと感じますよね?しかし、残念ながらそうではありません。

 なんと、1週間後に抜き打ちで行った効果測定テストの結果では、以下のような正答率になりました。

  • A:すべてインプット/すべてアウトプット 80%
  • B:すべてインプット/間違いだけアウトプット 36%
  • C:間違いだけインプット/すべてアウトプット 80%
  • D:間違いだけインプット/間違いだけアウトプット 33%

 要領よく間違えたところだけをやっていたDグループは、そのときにはすべて覚えられたはずなのに、1週間経つと3分の1ほどしか覚えていなかったのです。

 ちなみに、すべて覚えるまでにかかった時間は、インプットもアウトプットもすべてやっていたAグループがかかった時間を100とすると、B・Cともに75くらい、Dは50くらいでした。アウトプットを減らすと少し時間を短縮できますが、覚えた量は3分の1ほどになりますから、よい勉強のやり方とは言えません。

 一方、インプットに関しては、正解していたものは行わなくても、正答率には差が出ませんでした。覚えているものを再度インプットする作業はなくすのが効率的ですね。

 この実験結果から、私たちの脳はインプットよりアウトプットを重視していることがよくわかります。子どもたちの勉強にあてはめると、成績を上げるためには「授業を受ける(インプット)」よりも、「演習をする(アウトプット)」のほうが大切ということです。

問題演習の時間が取れないのであれば、授業を減らすことも検討が必要

 あらためてですが、「授業を受けるだけ」では習ったことがほとんど定着しません。ましてや、初見の内容を習う通常授業ではなく、既習単元の復習になることが多い季節講習ではなおさらです。最初に習ったときに覚えられた内容も含めて授業で習うのは、まさに「合っていたものも、間違っていたものもすべてインプットし直す」のと同じような、無駄の多い学習だと思いませんか?

 どんなに忙しくても、演習時間は確保しましょう。もし十分な演習時間が確保できないのであれば、授業を受ける時間を減らすことも検討したほうがよいでしょう。

 私たちテスティーでも自習室の活用を促したり、演習時間を確保するための自習道場のような場を用意したりして、アウトプットの時間を設けるように心掛けています。

 季節講習のオプション講座や日曜日の特別講座などは、それがインプット的なものなのかアウトプット的なものなのか、インプット的なものだとしたらアウトプットの時間は確保できるのか、よくよく考えたうえで受講してくださいね。くれぐれもインプットの授業ばかりがぎゅうぎゅうに詰め込まれているようなスケジュールにならないようご注意ください。しっかり演習を積み重ねて、着実に力を伸ばしていきましょう。