集団指導は全員に最適化されてはいない

 多くの中学受験生は、集団指導の塾に通います。確かに子どもの学びのベースとなる「学校」も集団指導ですし、自分が集団に合わせて学習を進めることができるようになるのは大事なことです。

 しかし、そうした子ども自身の集団の中で学ぶ力の育成が大事だとは理解しつつも、個別最適化した学びによって、学力の伸びはもっと速くなることもまた事実です。

 私もかつてはSAPIXで指導をしていたからよくわかりますが、集団指導においては、講師は複数の生徒を抱えていますから、授業の進度はクラスの真ん中~できる子に合わせることになります。理解が不十分な子どもがいても、その子に合わせてペースを落とすことはできません。

 逆に、もうわかっていて退屈している子がいても、待ってもらわなければいけない場面も出てきます。また、ひいき目無しにすべての生徒を見なければいけませんから、一人ひとりにかけられる「熱量」も、親が「我が子」を見る「熱量」と同じにはなりません

 となると、当然ですが、それぞれの子どもの最大限の成長が引き出せているわけではないのです。

個人に合った学習で成長速度を上げる

 事実、集団指導をやめて、テスティーに転塾してきたことで、成績がとても上がる子は多いです。例えば、集団塾で志望校だった国学院久我山をあきらめた方が良いと言われ、テスティーに転塾してきて、そこから逆転合格を掴んだ生徒がいました。

 あきらめた方が良いと言った集団塾の先生は、誠実な方だったのだと思います。もし生徒をやめさせないこと、売り上げを減らさないことだけを考える先生だったら、無責任に「きっといけます!お任せください!」と言って希望を持たせて続けさせようとしたことでしょう。

 自分たちの指導をそのまま受ける限り、合格できる可能性はほぼ無いということを正直に言うのは難しいことです。でも、ちゃんと伝えてくれる先生でした。

 そして、その集団塾の先生が、プロの視点で見てあきらめた方が良いと判断した志望校に、テスティーは合格させることができました。適切な課題に取り組ませることで成長の速度が全く変わってくるということが読み取れるのではないでしょうか。

 あなたのご家庭でも、集団授業で出される宿題を漫然とこなすのではなく、課題意識を持って適切な教材をやり込むことで、お子さんの成績は今からでもグッと伸ばすことが可能です。

「ちょうどいい」課題をスモールステップで

 ではどんな課題をやらせると良いか。端的にまとめると、

  • ① 過去問で傾向を把握して、メリハリをつける
  • ② その子にとって難しすぎず簡単すぎない難易度のものを、スモールステップで進める

ということになります。

 6年生だと①が重要になりますが、5年生以下の子であれば①はあまり意識しなくて大丈夫です。むしろ5年生までは土台作りなので、「志望校に出るものしかやらない」よりも「一通り知っている状態を目指す」方が上手くいきやすいです。

 テスティーの場合には②をやらせるうえで、上記の例にもあるように講師が適切な課題をプリントで与えることもありますが、ご家庭でやる場合には塾の教材で構いません。これまでに取り組んできたものをあらためてもう一度やり込むようにすると良いでしょう。

 その時に、難しすぎて理解できないものは捨て問だと割り切る勇気が大事になってきます。多くの親御さんがやってしまう大失敗として、ゴールから考えて、「この学校に合格するためにはこれくらいできなきゃ」という課題を子どもにやらせてしまうケースがあります。

 これは子どもの成績が逆に下がることにつながるのでお気を付けください。

無理な課題をやらせたことで成績が悪化した事例

 実際にあった事例についてお伝えします(個人が特定されないように実際の話に少し変更を加えます)。

 数年前の冬にテスティーに入会したAさんは女子学院中学校志望の子でした。彼女は5年生までは早稲アカで偏差値60くらいが取れていて、女子学院中学校まであともう一歩頑張ろうというくらいの成績でした。

 しかし、6年生になって算数の成績がどんどん下がっていき、テスティーに来たときには偏差値50くらいしか取れなくなってしまっていました。このままではまずいと思ってテスティーに来たというわけです。

 その子が調子を崩した理由が、親が「中学への算数」を子どもにやらせていたからでした。苦手な算数を強化して、最難関校の女子学院中学校に合格させようということだったそうです。

 しかし、この「中学への算数」は、得意な子がSAPIXで偏差値60弱、日能研の合不合判定テストであれば偏差値65くらい取れている子がさらに上を目指すために使う教材で、苦手な子の弱点補強に使うような教材ではありません

 その子にとって無理な課題をやらせることで、成長に繋がらないムダな時間を使わせ、その上自信を喪失してできるはずの問題までできなくなってしまい、成績は下降の一途をたどることになってしまったのでした

過去問の傾向を知る大切さ

 ちなみに女子学院中学校の入試の傾向としては、中学への算数のメインコンテンツである「日日の演習」のような思考力が問われる問題ではなく、「プラスワン問題集」のような典型問題を早く正確に解く処理能力が問われる問題で、勉強の方向性としてもずれています

 御三家というくくりで難関校を目指すなら「中学への算数」を使おう、なんて考えてしまうと失敗するんですね。①過去問を見て傾向に合わせるか、②その子にあったレベルの課題をやらせるか、どちらかが意識できていたら避けられた成績ダウンだったのではないかと思います。

 なんとかテスティーで立て直しをはかったのですが、残念ながら女子学院中学校には届かず第2志望の学校に進学することになりました。もし5年生のうちからテスティーに来てくれていたら、きっと合格させてあげられたのに。そう思う悔しい結果でした。

子どもに最適な学習をさせてあげよう

 やらせる課題を間違えてしまったばかりに、子どもの努力をムダにしてしまい、場合によってはかえって成績を下げてしまうご家庭が残念ながら多くあります。

 あなたのご家庭ではそうならないように、お子さんの学力と志望校の傾向を正確に把握するようにしてください。その上で、取り組む参考書や問題は、お子さんの状況を見ながら最適なタイミングを考えましょう。

 集団指導の先生は、そこまで細かくお子さんの状況を見てはくれません。それは他の子も同様です。

 あなたがお子さんのことをしっかり見てあげて、お子さんに最適な学習をさせてあげれば、他の子よりも速いスピードで成長させてあげられます。そうすれば、他の子を追い抜いて憧れの第一志望の学校の合格を掴むことができます。

 頑張ってくださいね。