消化不良にならないためにスケジュール管理が大切

 中学受験の勉強をしていく上で、何が怖いかというと「消化不良」です。日々新しい知識を習っているのに、それが記憶に定着せず、だんだんと忘れてしまう状態のことです。この「消化不良」の原因は2つ考えられます。

 1つ目は復習・演習不足です。こちらはわかりやすいですね。日々新たなことをインプットするのに追われ、それらの復習・演習が追い付かず、せっかく習ったことを忘れてしまうパターンです。

 そうならないためには、復習・演習の時間を必ず設けるよう、タスク管理、スケジュール管理を徹底することが大切です。ただ、このことはきっとみなさんもわかっていると思います。

短期集中型の学習は危険?

 もう1つ、多くの方が気づいていない消化不良の原因があります。それは、「短期集中学習の弊害」です。簡単に説明すると、人は時間をかけて覚えた記憶はなかなか忘れず、短期間に一気に覚えた記憶はすぐに忘れてしまうのです。

 このことは様々な教育心理学の実験で示されています。たとえば、コロンビア大学の心理学者ジャネット・メトカーフが、記憶と学習に関する心理学で有名なウィリアムズ大学のネイト・コーネルと一緒に行った実験に、以下のものがあります。

 小学生の子どもたちを集めて、子どもには難しい大人の語彙(ごい)を覚える勉強をさせました。そしてテストを行い、3分の1は答え合わせをせずに放置しました。3分の1はすぐに答え合わせをして正しい答えを確認しました。そして、残りの3分の1は時間を空けて答え合わせをして正しい答えを確認しました。

 そして、最終確認テストをしたところ、答え合わせをせずに放置したグループの正答率が6%だったのに対し、すぐに答え合わせをしたグループは17%、時間を空けて答え合わせをしたグループは29%になりました。

 答え合わせをしないのは論外としても、答え合わせのタイミングの違いだけで、2倍とまではいかないですが、覚えられた量にかなりの差があることがわかりますね。

 ちなみにこの実験は、ルール上「答え合わせ」が「復習」を兼ねている形なので、答え合わせまでの時間を空けることでベストの結果になりました。実際の勉強では、答え合わせと間違い直しをまずは解いた直後に行うのが良いと思います。その上で、後で解き直す復習のタイミングを適切にコントロールするのが良いでしょう。

記憶に定着させるメモリーサイクル法を意識しよう!

 この「時間を空けて勉強すること」により定着が良くなるのは「分散効果」と呼ばれています。ちなみにテスティーではこれを「メモリーサイクル法」と呼んで、適切な復習のタイミングを指導しています。

 最も効率的に記憶を強くするには「『忘れかけ』のタイミングで復習をするのが大事」という教え方もしています。勉強はやるかやらないかの差がハッキリと出ます。復習・演習をすることが大切なのは言うまでもありません。しかし、「やるかやらないか」だけでなく、「いつやるのか」による差もなかなか侮れないものなのです。

 キツキツなスケジュールで一気に勉強すると、すぐに忘れてしまいます。これでは、せっかく勉強するのにもったいないですよね。勉強するときはちゃんと適切な時間を空けて復習して、長持ちする記憶を作ってくださいね。

「時間が無いから復習をためてしまったら大変……だからタスクを早め早めに消化しよう!」そんな風に思ってしまう方が多いです。必ずしもそれがベストではない場合もあるということをお伝えしたく、今回は最適な復習のタイミングについて記事にしてみました。

 ぜひ参考にして、日々の学習スケジュールを立ててみてください。そして、学んだことを着実に消化して身につけてくださいね。