過去問演習で大切なのは復習のタイミング
中学受験において、過去問対策は非常に重要です。中学入試は学校によって問題の傾向が大きく変わります。そのため、過去問でその中学校の問題傾向に慣れて、解けるようになっておけば、一般的な模試での自分の偏差値よりも上位の学校に合格することが可能なのです。では、その過去問にはどう取り組めば良いのでしょうか。
過去問に限らず勉強全てに言えることですが、できるようになるためには「復習」が不可欠です。なぜなら、人は「忘れる生き物」だからです。ただ何となく授業を聞いただけでは、1週間も経てば頭に残っていることは1割くらいになってしまうでしょう。
では、その復習はいつやったら良いのでしょうか? 今回お伝えするのは、その復習をするべきタイミングについてです。
まず、大原則として、復習は「ある程度間をあけてする方が良い」というのが私たちの脳の仕組みです。よく「忘れないうちに復習しましょう」という先生がいますが、それは半分正解・半分間違いです。
確かに時間をあけすぎて「すっかり忘れた」頃に復習するのはよくありません。しかし、習ったばかり・解いたばかりのものをバッチリ覚えているうちにすぐにやるのもまた、復習の効果は低くなるのです。簡単にまとめると、復習は「忘れかけ」のときにやるのが最高!ということになるのですね。
ただ、そうすると問題が発生します。「忘れかけ」っていったいいつなのでしょうか。皆さんはご存知でしょうか?1日後とか3日後とか決まっていればわかりやすいのですが、「忘れかけ」のタイミングを判断するのはとても難しいことです。
しかし、これはあなたのお子さんにとって良い知らせでもあります。なぜなら、周りのライバルたちにとってもまた難しいことで、ちゃんとできている子はほとんどいないからです。ですから、お子さんが「忘れかけ」のタイミングできちんと復習できるようになれば、成績は短期間でグッと伸びていき、逆転合格も夢じゃありません。
「忘れかけ」は自己判断ができるようになる
改めて「忘れかけ」かどうかはどのように判断したら良いのでしょうか。実は最終的に「自己判断」ができるようになります。それを示す教育心理学の実験にこのようなものがあります。
隠れアイビーリーグと言われるバーナードカレッジのLisaK.Son准教授が2009年にこんな実験を行いました。
31名の大学生の実験参加者たちに、難しい単語60語を記憶させました。各単語を学習した後に、学生たちに「すぐに復習」「あとで復習」のどちらかをさせました。そのときに、3分の2の単語は学生たちがすぐに復習するかあとで復習するか選べましたが、残りの3分の1の単語は学生たちが選択したものとは反対の方法が強制されました。
その結果、「あとで復習が良い」と思ったものを「すぐに復習させる」と学習効果が大きく下がることがわかりました。つまり、「ちゃんとわかっているから、すぐにやらないで後でやろう」という自己判断は、割と信頼できるということですね。なお、「すぐに復習が良い」と思ったものを「あとで復習させる」と学習効果が少しだけ上がることもわかりました。
いずれにせよ、間をあけて復習した方が成果が上がるようです。ただ、この実験であけた間隔は、「復習するものの中で後ろに回す」という程度なので、それほど時間が経ってはいないと考えられます。
もしあける間隔を「数日」とか「数週間」にすると、おそらく成果はグッと下がってしまうのではないでしょうか。意味がよくわかっていないことは、忘れるのが早いというのもまた脳の特徴ですからね。
子どもの「わかったの感覚」を養おう
このような「自分がわかっているかどうかを自己判断する力」は、大学生くらいだとわりと信頼できるとわかりました。未就学児にはまだその力がありませんから、小学生から中高生くらいにかけて育っていくわけです。
ですから、小学生の中には未熟な子も当然います。そういう子には「わかったつもり」になっているだけで、本当はわかっていなかったということが頻繁に起こります。そして、復習までの間隔をあけすぎて、気付いたときにはすっかり忘れてしまいます。
だからそういった子には、わかっているかどうかの判断を手伝ってあげながら、徐々に正しい「わかったの感覚」を教えてあげる必要があるのです。
私たちテスティーでは、これを「ステイライン」と呼び、生徒に指導をするうえでとても重視しています。効率の良い勉強をするうえでの基盤になるからです。ぜひあなたのお子さんにも身につけさせてあげてください。その方法は「成績アップの秘訣!子どもが分かっているかを確かめる方法は?」の記事に書いてありますので、そちらも併せて確認してみてくださいね。
正しい自己判断の感覚に基づいて、「そろそろ忘れかけだからもう一度解いて復習しておこう」という判断ができるようになると、効率の良い最短距離の学習ができ、解いた過去問がばっちり力として定着します。
もちろん普段の塾の授業の復習や宿題でも同じです。本人のその感覚が未熟なら、先生やお父さんお母さんがフォローして最高のタイミングを教えてあげましょう。そうすれば、他の受験生たちをどんどん追い抜くことができます。ぜひ成績をグングン伸ばして、第一志望への合格を掴み取ってくださいね。