同級生との共同生活で
「自分の核が形成される」
寮を持つ学校は全国各地にあるが、各校さまざまな特色がある。
名門男子校として知られる函館ラ・サール中学校・高等学校の「ラ・サール学園寮」では、中学の3年間、1学年全員(50人)が同じ大部屋で共同生活を行う。高校生からは4人部屋だが、高校から入学の生徒は1年間大部屋で過ごす。広い部屋に木製の二段ベッドがずらりと並ぶ光景は圧巻だ。
なぜこのような大部屋を取り入れているのか。理事長代理で同校の卒業生でもある井上治先生はその理由を「自分と異なる個性をもったさまざまな人間と付き合わざるをえない環境
「背景の異なる同級生たちと暮らしを共にするうちに、自分を相対化できます。その環境の中で、自分の核となるものが形成されていくのです」
大部屋にいる間、プライベートスペースはベッド上のみ。ゲーム機など、電子機器の持ち込みは一切禁止だ。スマートフォンは家との往復時以外は学校で預かるという。最初の2週間は、毎晩布団をかぶって泣いている子もいる。しかし1カ月もすると、伸び伸びと寮生活を楽しむようになる。
しかし、ネットもゲームもない環境で、子どもたちは自由時間に何をして過ごすのだろうか。
「トランプや囲碁将棋などもありますが、友達とのおしゃべりを楽しんでいます。最近の子どもは友達同士の会話もSNS上だけというケースが多いですが、友達と顔を見ながら語り合う方が実は楽しいということを、生徒は気づいていきます」(井上氏)
寮では学習もみんなで行う。土曜日以外の午後7時半から「義務自習」と呼ばれる学習時間が設けられていて、勉強机が並ぶ自習室で、休憩時間を挟んで午後10時まで勉強(高校生は同8~11時)。周りで友達が頑張っている姿に刺激されて一層勉強に熱が入る。