Photo:PIXTA

次世代に不可欠な
「学力の3要素」とは?

 2021年に始まった「大学入学共通テスト(以降、共通テスト)」は、5年目を迎える25年に大きく様変わりする。22年入学の高校1年生から適用された新学習指導要領に対応した試験内容になり、従来の6教科30科目から、新教科の「情報Ⅰ」を加えた7教科21科目に再編される。

 教育ジャーナリストの清水克彦氏は「時代の急速な変化に対応して生きていく力を育むために、学校教育を改め、大学の入り口である入試も根本的に改革する。これが文部科学省の狙いです」と解説する。

「新学習指導要領では、次世代を生きる子どもたちに不可欠な学力の3要素として、従来の『知識・技能』に加えて『思考力・判断力・表現力』と『学びに向かう力・人間性』が示されました。この3要素が、大学入試で問われる学力に合致します」

 実際の試験はどのようになるのか。大学入試センター公表の「試作問題(令和7年度)」を見てみよう。「数学Ⅰ、数学A」では次のような出題がある。

【太郎さんと花子さんは、社会のグローバル化に伴う都市間の国際競争において、都市周辺にある国際空港の利便性が重要視されていることを知った。そこで、日本を含む世界の主な40の国際空港それぞれから最も近い主要ターミナル駅へ鉄道等で移動するときの「移動距離」、「所要時間」、「費用」を調べた。(一部省略)】

 以上の前提で、移動距離と所要時間、所要時間と費用、費用と移動距離の3つの散布図が明示され、小問に答えるというものだ。清水氏は「次世代に不可欠なデータサイエンスを先取りする問題」と分析する。

「グラフや図表から答えを導き出す『数理解析力』が問われています。この能力は、行政や企業が保有するさまざまなビッグデータを解析して社会問題を解決するという『データサイエンス』の基礎となるものです」

 出題科目が大きく変更になるのが「地理歴史」と「公民」だ。「地理総合、地理探究」「歴史総合、世界史探究」「歴史総合、日本史探究」「公共、倫理」「公共、政治・経済」「地理総合、歴史総合、公共」の6科目から、最大2科目選択する。

 25年度から「現代社会」に代わって加わる「公共」では、時事問題への理解が不可欠。これは以前の「現代社会」と変わらないが「加えて、自ら疑問を持って考察を深めていく姿勢が求められる」(清水氏)。公共の試作問題には、次の出題がある。

【「公共」の授業で1年間のまとめとして、生徒Ⅹは同じ関心をもつ生徒たちとグループをつくり、「人口減少が続く中でどのような社会をつくればよいか」という課題を設定し、探究活動を行った。(一部省略)】

 この前提で、生徒たちは各種資料を収集・分析しながら、調べた結果を発表し、他グループからの質問を受け、研究を重ねていく。施策を導き出すまでの過程で小問が4問設定されている。

 学生たちに望まれる学習姿勢を、問題で体現したような構成だ。「知識や技能ではなく、学びの体験を測る良問」(清水氏)

 こういった問題を抵抗なく解くには、日頃から世の中の出来事に「なぜ?」と疑問を持つことが重要。ニュースを見ながら親子で意見を言い合うなど、家庭でもフォローしたい。