日能研はどんな塾か?
最大規模の大手塾。一言でいうと「ちゃんとした企業」。子供を通わせる先として安心感がある。日能研(本部)、日能研関東、日能研東海、日能研関西、日能研九州と5つの法人からなり、約150の校舎があり、全国展開をしている。何万もの生徒が日能研に通っている。
「データの日能研」とよばれ、模試のデータだけではなく、学校に関しても豊富な情報を持っている。
日能研のテキストはオリジナル
授業ではオリジナルテキスト「本科教室」を使用。余白が大きく、直接書き込んでいくことができる。復習(帰宅後の学習)用には「栄冠への道」というオリジナルテキストを使う。
特に算数のテキストに工夫がある。「文章の読解や記述は得意だけど、算数が嫌いで苦手」というタイプの生徒にとっては、算数の勉強は無機質で単調なものに感じられる。日能研の算数は面白く勉強ができるように工夫があり、算数が苦手な生徒でも学びやすくなっている。つまり、無機質に感じられないようにしているわけだ。他の科目も丁寧で、ひとつひとつを理解させるようにできている。ただ、得意科目に関してはその丁寧さが「まどろっこしい」と感じることがあるかもしれない。
日能研はすべて専任講師
穏やかな講師が多いのが特徴。初対面の講師が生徒を呼び捨てにするようなことはない。
集団授業の講師に大学生バイトはいない。
一方で、日能研は講師とは別に大学生をチューターとして起用し、生徒が自習室で勉強していて、分からないところがあればチューターが対応してくれる。また、日能研プラネットが運営する「個別指導塾ユリウス」もあり、こちらは大学生バイトが講師として活躍している。ユリウスは中学生や高校生の指導もし、塾まで通えない生徒のために家庭教師を派遣することもしている。こちらでは大学生講師も活躍していて、日能研の卒業生も多い。
小学生は大学生になつく。そのため、大学生がチューターや個別指導で接することで、生徒はモチベーションをあげていく。
授業は1クラス約25人
一クラスの人数が約25人。他塾に比べて一クラスの人数がやや多い。
また、授業のスタイルは予習をしなくていい「復習主義」。
日能研は進度が他塾に比べてゆっくりなので、4年生以降に「中学受験をしたい」と思って入塾しても追いつきやすい。たとえば、なにかしらの理由で「地元の公立中学に進学したくない」と思って、5年生から入塾するとなっても、比較的苦戦をせずにすむ。
また、校舎や講師にもよるが、宿題チェックも記述の添削もやってくれる。日能研は中学受験を大衆化させた塾で、早くから共働き家庭をターゲットにしてきた。つまり、「塾におまかせ」ができ、親が子供の中学受験のフォローをしなくてもいいようになっている。
志望校対策講座が豊富
四大塾の中で、日能研が特徴的なのは「志望校対策講座」の豊富さだ。
6年生の9月からは、志望校別のクラスも開講する。たとえば日能研入試問題研究特別講座、通称「日特」などだ。他塾は御三家や早稲田や慶應の系列校などの難関校の対策講座のみ行うが、日特では中堅上位校の志望校対策講座も豊富だ。
上位校の「日特」では、海城、攻玉社、サレジオ学院、芝、逗子開成、桐朋、本郷、早稲田高等学院、鴎友学園女子、学習院女子、吉祥女子、頌栄女子学院、流足学園、横浜共立学園、立教女学院、渋谷教育学園渋谷、中央大学附属横浜、早稲田実業などの志望校対策を行っている。
一般的に、志望校別の対策講座は大手塾に優位性があるとされる。テキストを作り、その学校の対策のエキスパートの講師を養成するのには、人材も人手も豊富な組織の方がいいからだ。
2023年終了組の保護者はいう。
「上の子は他の大手塾でしたが、御三家などのトップクラスの学校の志望校対策講座しかないので、志望校対策を個別指導塾にお願いしました。個別指導なので費用は高くなります。日能研は中堅上位の学校の講座もあって助かりました。集団授業だと同じ学校を目指す子たちと接するので、本人のモチベーションもあがりました。ただ、会場が一カ所なのでそこまで通うのは大変でした」
「本部系」と「関東系」の違いとは
首都圏の日能研の校舎には本部系と関東系があるとされ、「どう違うの?」とよく話題になるが、運営している法人が違う。日能研(本部)が運営する校舎は「本部系」、日能研関東が運営する校舎は「関東系」とよばれている。
関東系は中学受験に関心が高い家庭が集まる場所に校舎が多く、そのニーズに合わせた内容になっている。地域選抜クラス、トップオブマスタークラス(TMクラス)が設置されているのは池袋校、大宮校や南浦和校などの関東系の校舎だ。また、このTMクラスの選抜基準のハードルは高い。
首都圏で日能研に入塾を希望する際に、その校舎が本部系か関東系かを知っておきたい保護者も多いが、公式サイトによると関東系は以下の校舎である。
神奈川は日吉校、たまプラーザ校、新百合ヶ丘校、青葉台校、川崎校、センター北校、武蔵小杉校、宮前平校、新川崎校。
東京は、調布校、二子玉川校、旗の台校、八王子校、成増校、多摩センター校、巣鴨校、浅草橋校、新中野校、立川校、蒲田校、田無校、府中校、大井町校、自由が丘校、池袋校、明大前校、荻窪校、三田校、中目黒校、駒沢大学校、品川校。埼玉は所沢校、南浦和校、川越校、大宮校、久喜校、草加校、志木校、上尾校、川口校、新越谷校、三郷中央校。
これ以外の首都圏の校舎は本部系と判断できるだろう。
どんな生徒に向いているか?
現在、多くの塾が5年生の末までに、カリキュラムを終わらせ、6年生からは復習を繰り返す中で、より難しい問題に取り組んでいく。
その中で日能研は6年生の夏前までにカリキュラムを終わらせる。進度がゆっくりである。
そのため、あまり速い進度だとついていけないが、ひとつひとつをちゃんと理解していくことができる生徒に向いている。
偏差値至上主義ではない
また、「偏差値が高い学校=良い学校」という考えを植え付けない塾なので、「子供を偏差値至上主義の受験マシーンにしたくない」という保護者が日能研を選ぶケースも多い。
取材をしていても、日能研から御三家などの難関校に進学する生徒たちは、特に無理をせずに勉強をしていることが多い。たまたま中学受験の勉強に向いていたので、頑張ってみたら、御三家に合格したというパターンだ。彼らの保護者も受験オタクではないし、そこまで中学受験にのめり込んでいることはない。
そのため、「どうしても御三家に入れたい」という保護者にとって、日能研は相性が良くないかもしれない。
女子も受け入れやすい
もうひとつは女子にも受け入れやすい塾ということだ。
合格実績をみると、大妻や恵泉といった人気の女子校へ多くの生徒が合格している。
中学受験をテーマに描いた漫画『二月の勝者―絶対合格の教室―』(小学館・高瀬志帆著)の中で「女子生徒たちは国語がいいが算数は苦手、男子はその反対」という旨の記述がある。誰もがそうというわけではないが、先に書いたように日能研は算数のテキストに工夫があり、算数に苦手意識がある生徒も面白く勉強ができる。
また、講師が必要以上にスパルタ指導をしたり、容易に生徒を呼び捨てにしたりしないのも、おとなしい性格の女子には向いているだろう。四大塾の中では比較的、女子生徒と相性がいい塾といえよう。
保護者は日能研をどう思っている?
保護者は、日能研をどんな塾と考えているのか。取材の中で聞いた、保護者達の評判や口コミをまとめてみた。
(2026年受験予定生徒の保護者)
(卒業生の保護者)
(卒業生や現役生の保護者)
(現役日能研生徒の保護者)
(卒業生の保護者)
(元日能研社員)
日能研の基本データ
校舎数 | 約150校 |
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生徒数 | - |
本科教室の 授業料 |
小学4年生=Wコース(4科、70分×4コマ/週)22,880円/月
その他、必要に応じて、 ・入会金22,000円 ・学習力育成テスト(2月~7月、4科)全10回44,000円 ・日能研全国公開模試(2月~7月、4科、全6回)26,400円 ・教材費等(2月~7月、4科)34,936円 ・副教材費(2月~7月、4科)4,675円 ・期間講習 の費用がかかる(以上は小学5年生時の費用) |
自習室の有無 | あり |
質問対応 | 大学生チューターが随時対応 |
授業の生徒数 | 約25人 |
専任講師の 比率 |
大学生バイトはいない |
生徒の男女比 | - |