
「塾に入らないでください」と伝える中学校も
「学校の勉強についていけるように先取りをしてくれる塾はないか」 「中だるみしないように塾に通わせたい」と、私も保護者たちに相談を持ちかけられます。
一方で、私立中学は入学説明会で「塾には入らないでくださいね」とハッキリと伝えることも多々あります。なぜかというと、多くの私立校では中学1年の頃は、学習習慣を維持させるために宿題や小テストをしっかりと出すからです。生徒には学校の勉強に専念してもらいたいわけです。
ところがいわゆる進学塾……つまり、先取りをする塾に入るとそちらの宿題を優先して学校の勉強がおろそかになる生徒が出てきます。中には学校の授業中に塾の宿題をする生徒も。
ある難関校の保護者がいいます。
「子どもの同級生の中には学校の勉強をまったくしないで塾の宿題だけをやっているケースもあります。親御さんの方針なんですよね。学校の成績が振るわなくなるのはどうなんでしょうね」
推薦入試が増えていく中では学校の成績も大切
このような進学塾に通って学校よりもはるかに速い進度で勉強をするのは難関校の生徒たちです。東大や医学部を狙うとなると先取りが必要だからです。特に数学はなるべく早く高校3年までのカリキュラムを終わらせる必要があるとされます。先取りをした後は、勉強したことの復習をしていきますが、以前より難しい内容を学んでいきます。
これはスパイラル方式といわれる学習法です。中学受験も同じですよね。小学4年で一通り中学受験で必要な内容をすべて勉強し、小学5年では同じ内容の応用をしっかりと学び、小学6年に入ると同じ内容の実践編を勉強していきます。以前学んだ内容なので取り組みやすいですし、学力が伸びていきます。
これらの先取りをする進学塾に通うか否かはそれぞれの家庭の判断となりますが、学校の勉強の妨げになるようなら止めた方がいいでしょう。
大学入試も6割が推薦になってきており、国立大学でも推薦入試が拡大しています。学力重視の推薦入試も多く、そうなると一般選抜の前哨戦として受験したい生徒も増えてきます。その際に出願条件で評定平均値を求められることが多々あります。
慶應の文学部の総合型選抜は面接がなく、英語のテストと小論文の点数が重視される試験で、一般選抜の前哨戦として受験しやすいのですが、評定4.1以上が出願条件です。国立大学の推薦も学力重視のケースが多く、一般選抜の前哨戦として受験する生徒もいるのですが、出願条件に評定平均値を求めるケースは多々見受けられます。
また、推薦入試では評定が高い方が合格しやすい場合も多く、そうなると、難関大や医学部を狙う生徒も評定を高くしておけば受験の機会が増えるわけです。そうなると、塾の勉強を優先して、学校の勉強をしないと、推薦が受けられなくなり、ちょっと損をする可能性が出てきます。
学校も「しかたない」とする通塾とは
学校は「中学から塾に通わなくていい」という一方で、「こういう通塾だったらいいんじゃないか」という場合もあります。中高一貫校の先生方がよくおっしゃいます。
「基礎学力は学校でしっかりと身につけさせますよ。一方で大学受験の具体的な対策は予備校や塾の方がプロなので、高校2年ぐらいからの通塾ならばかまわないです」
また、中高一貫校の中には塾と連携しているケースも多々あります。ここでいう塾とは、大学受験対策をする「進学塾」です。塾には「進学塾」以外の種類もあります。それは学校の勉強の「補習」です。
中高一貫校の中には「塾なしで大学受験対策ができます」とアピールするところもありますが、その中には非常に勉強量が多い学校もあります。
ある中高一貫校は入学時の難易度に比べて、大学合格実績が高いことで知られます。こういった学校を以前、雑誌の特集で「お得な学校」として取りあげていました。入学時のハードルが低く、難易度の高い大学に進学できるから「お得」なわけですが、実際にはそういった学校は6年間で相当勉強をさせます。宿題の量も多く、内容も難しい場合もあります。
その宿題が自力でこなせない場合は個別指導で見てもらいます。こういったニーズがあるので、中高一貫校の周りには個別指導塾がいくつも存在していることが多々あります。学校の近くにある塾の校舎はおすすめです。その学校の学習内容を把握していますし、その塾の評判も学校の中で知ることができますよね。
個別指導塾の活用方法は様々
さて、個別指導には2種類あります。講師が生徒に「勉強を教える」個別指導と、自習の伴走をしてくれる個別指導です。前者は1対1や1対2ぐらいの個別指導塾です。一人一人にしっかりと指導をしてくれます。後者の自習の管理系は1対2から1対5ぐらいで、自習に付き添ってくれます。
中高一貫校の中学生にとって大学受験ははるか先のことですから、勉強をする気にならないのも無理のないことでしょう。しかし、こういった自習管理系の個別指導塾に通えば、付き添ってくれることで強制的に勉強をするようになるのです。都内を歩いていると、こうした自習伴走系の個別指導を謳っている塾もあります。このような個別指導塾に通っている中高一貫校の生徒は実に多いのです。
ほかにも個別指導塾の使い方はいくつかあります。真面目にやっているのに成績が低迷している場合、基礎が抜け落ちているので、そこの補強をしてもらいます。四谷学院の個別指導は徹底して基礎の基礎からやり直しをさせますし、スクールIEは入塾時にテストをし、抜け落ちているところをチェックし、その部分を補強するカリキュラムを作ってくれます。
また、英検の対策をする個別指導も塾もあります。今、英検対策で2ヶ月で50万円ほどの費用がかかるオンライン指導塾がありますが、近所の個別指導塾でも英検の対策はできますし、自習室もあります。
このような大手の個別指導塾はカリキュラムやAIの活用などが優れていますが、街の小さな個別指導塾はベテランの先生が見てくれたり、地元の学校の学習内容を熟知していたりと優れた点があるから経営が続いているので、優秀であることも推測できます。
「なぜ塾に通うのか」を考えよう
「みんなが通うから」「塾通いをやめるのは不安だから」という理由でやみくもに塾に入れるのではなく、本当に塾が必要なのか、そして、自分たちのニーズに合う塾はどこなのかを考えて、塾選びをしていただければと思います。
「ブランド塾」に通った結果、基礎が抜け落ち、学力が伸びずに大学受験に失敗し、浪人して予備校で基礎からやり直したらぐんと偏差値が伸びて希望する大学に合格したという例は毎年多く見られます。そうならないためにも、塾選びはキチンとしていただきたいと切に願います。