
小学校受験は情報が入手しにくい
小学校受験は入試の内容がオープンにされていないため、情報が入手しにくい。そのため、「学校とのコネクションが必要」「卒業生の子どもが有利」「専業主婦の家庭が有利」といったうわさがまことしやかにささやかれ、拡散されている。
「卒業生のお子さんだからといって、特別に優遇される制度はありません。ただ、卒業生の方々は母校への思い入れが強く、お子さんの受験対策にも熱心に取り組む傾向があるため、結果として合格率が高くなることはあります」(伸芽会取締役教育本部部長 谷原優子さん)
たとえば、慶應の幼稚舎はペーパー試験が廃止されて何十年もたつが、「もしかしたらペーパー試験が追加されるかもしれない」と、念のためにペーパー試験の対策講座を追加で受講させる熱心な保護者もいるほどだという。
学習のレベルが高い小学校の場合、当然ながら、まずは授業についていくための学力が求められる。しかし、合否を左右する要素はそれだけではない。
「入試では、小学校に入ってからの集団生活や、お友達との関わりがスムーズにできるかといったことを見ようとする試験もあります」(谷原さん)
学校としては入学後、共同生活をスムーズに送り、健やかに過ごせる児童を選抜したいわけだ。
「卒業生のお子さんでも対策が足りない場合は、容赦なく不合格になります」(伸芽会教育研究所所長 飯田道郎さん)
小学校によって、試験の内容はさまざまだ。先に述べたように、慶應の幼稚舎はペーパー試験を課さない。一方で雙葉や白百合、暁星といった「高校が進学校」の場合はペーパー試験をしっかりと課し、理解度を見る。ペーパー試験の対策をしっかりとすれば、その点においては合格できる可能性が高まる入試となっている。
かつては、小学校受験の情報は一部の保護者しか持ち得ないものだったが、今は小学校受験の対策をしている教室に通えば情報が入手でき、対策もできるので裾野は広がっている。
小学校受験の特徴に合わせた授業

「年中までに入室していただくといいのですが、本格的に対策が始まるのは年長になってからです」(飯田さん)
たとえば、ペーパー試験対策ではまず数を具象化して見せる。「2+1=3」などの計算問題は、実際にリンゴなどのモノを使って教えていく。「リンゴが2つあって、もう1つ加えると3つになる」といったふうに、具体性を持たせて理解させていく。2+1=3を子どもは暗記してしまうこともあるが、覚えさせるのではなく、理解させるようにする。
それからペーパー試験の特徴に合わせた指導を行う。小学校入試では用紙に問題文が書かれておらず、音声で読み上げられるのが一般的。授業でもこれに準じて、子どもたちに耳で聞いて解く練習を積ませている。
教室を見学した日、年長クラスの生徒たちはマス目にイラストが描かれた問題を解いていた。「上から3段目、右から2番目の絵を△で囲みましょう」と音声で問題が流れると、生徒らは指示どおりにしようとする。
「上から3段目、右から2番目は聞いて位置がわかっても、三角という記号を聞き漏らしていると正解にはたどり着けません」(谷原さん)
また、3歳児幼稚園受験コースの学習院・暁星クラスでは、個別のペーパー試験対策と並行して、集団での行動も対策していた。講師が子どもを1人ずつ呼び出して、マス目にシールを貼る学習を指導する。その間、残りの子どもはブロック遊びをさせる。ブロック遊びに参加できずにモジモジしているクラスメートがいたため、「一緒に遊ぼうと、言葉で伝えましょう」とアドバイスをしたところ、その子どもはクラスメートに話しかけて一緒に遊び始めた。
そのブロック遊びはカーペットの上でするため裸足になるが、その際も「靴下をたたんで靴の上に置きましょう」と指示をする。うまくできない子どもには「こうやるときれいにたためますよ」とお手本を見せる。
こう書くと細かく指示するように聞こえそうだが、実際にはそうではない。基本的には子どもの自主性を見守り、必要な時に端的にアドバイスをする。「どうしたらかっこいいかな」などと声をかけ、子どもたちが自分で考えて行動できるように促す。
これらの授業を「親から子どもを預かって行う」のが伸芽会の特徴だ。保護者が授業を参観できる教室もあるが、入試本番には保護者は入試会場に入れない。そのため、授業の段階からしっかりと子どもが一人で課題ができるようにする。
出題傾向を把握し、対策
ほとんどの小学校では入試問題を公表していないが、受験生から聞き取りをし、どんな問題が出されたかを把握している。その出題傾向に沿ったカリキュラムを作成し、活用している。
授業で使用するペーパーには、入試の時と同じように問題文は書かれていない。自分の耳で問題を聞く力を育てていく。
また、伸芽会模試という、年間受験者数が延べ2万人を超える公開模試も実施。過去の入試分析情報をもとに、最新の入試動向を予測して作成される。本番と同じ状況を再現した教室で模試を受ける。
さらに、ペーパーテスト、集団テスト(グループワーク)、個別テスト(面接)、運動テストなどの模試も行う。現在の立ち位置を把握するだけではなく、本番への場慣れもできる。
徹底した研修を受けた講師陣

採用の基準はまず、教育に対して情熱を持っているかを見る。幼稚園や他の幼児教室などで講師をしていた経験者も多い。
研修はしっかりと行い、配属されてからも毎週、学校別の部会や勉強会がある。学校ごとの対策の研究会も実施し、その学校の歴史なども学ぶ。本部研修の後に、半年間の仮配属を経てから本配属になることもある。
合宿で自主自律を学ぶ
2泊3日の合宿を行う。生徒たちは親元を離れて過ごす中で、自主自律の生活習慣の指導を受ける。
家庭学習もできるよう、保護者と連携
原則、面談は月に一度。また、送り迎えの時などにもコミュニケーションをとっていく。
「授業を受けるだけでは学習が定着しないので、家での復習も大切です。家庭学習の進め方なども丁寧にアドバイスしていきます。面接がある学校を受験される場合は、それについてのお話もします」(谷原さん)
託児・学童サービスも提供
伸芽’S(しんが〜ず)クラブでは、伸芽会の小学校受験対策カリキュラムを取り入れた託児サービスを提供する。満1歳から3歳が通うプレナーサリーコース、年少・年中・年長向けのアフター幼稚園コースがある。
小学校受験を終えた後のサービスとして、伸芽’Sクラブ学童もある。学校の宿題の指導、内部進学や中学受験の指導を行う。また、ピアノやバイオリンなどの習い事もできる。預かり時間の延長や送迎にも対応し、共働き家庭をサポートする。
伸芽会に合う生徒・合わない生徒
子どもの様子を見たいという気持ちが強い保護者の方にとっては、伸芽会の「授業参観を行わない」という方針に戸惑いを感じるかもしれない。一方で、その方針に理解を示せるなら、十分に検討の価値があるだろう。
伸芽会の基本情報
校舎数 | 22教室 |
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月謝制のクラスに通っている生徒数 | 1,854名 |
授業料 |
基本コースの月謝(全て税別) |
質問対応 | TEL、メール等 |
授業の生徒数 | 教室規模、学年によって異なる:4名~30名程度 |
専任講師の比率 | 非公表 |
生徒の男女比 | 男子:849名 女子:1,005名 |