オーバースペックではない「ちょうどいい塾」を目指す
中学受験生の約半数が使っているテキストは「予習シリーズ」だ。四谷大塚が制作するテキストとカリキュラムを使用する塾が、実は中学受験の半分を占める。
この「予習シリーズ」は元々、難関校対策を意識した内容だったが、改訂後は難易度がさらに高くなり、進度も早くなった。そのため、「自分にはオーバースペックで使いにくい」と感じる生徒や保護者もいる。よって、予習シリーズを使用する各塾ではオリジナルプリントを作成し、使用するなどの工夫をしている。
スクールFCはオリジナルテキストもしっかりと作り、小学4年のカリキュラムの一部は「予習シリーズ」よりもゆっくりと丁寧に進む。たとえば、予習シリーズでは1週間で終える内容に2週間かけることもある。
「今、中学受験の塾は全体として、早い段階からオーバースペックになっており、『3・4年生のわが子にとってちょうどいい塾がない』と困っている保護者たちが増えています。スクールFCは、そのお悩みにも応じられる、柔軟な場の提供を目指しています」(教務部 部長 仁木耕平さん)
小学5年以降は「予習シリーズ」のカリキュラムに沿って学習を進め、四谷大塚の「合不合判定テスト」も受験するが、オリジナルテキストも併用していく。オリジナルテキストには、基礎的で生徒が取り組みやすい問題が豊富に収録されている。
「クラスによってテキストの重みづけも変わります。難関校を狙うクラスは『予習シリーズ』を軸にした、ハイレベルな演習をガンガンこなしますが、『予習シリーズ』をサブ的なものと位置づけ、オリジナルテキストを中心に習得を図っていくクラスもあります」(スクールFC代表 松島伸浩さん)
「予習シリーズ」を補助するオリジナルテキスト

四谷大塚の「予習シリーズ」を使用し、小学5年以降は完全に四谷大塚のカリキュラムに準拠するが、一方でオリジナルテキストも豊富に用意している。「予習シリーズ」を補助する位置づけのオリジナルテキストは、生徒たちがスムーズに理解し、問題を解けるような難易度とわかりやすさを工夫している。
小学4年の漢字練習テキストは「ハノン」、作文や知識の習得教材は「あかね」、計算教材は「サボテン」と、子どもに親しみやすいタイトルがついている。
また、小学4年では、多くの知識をカルタを通じて覚えていく。たとえば、理科のカルタ①は春の植物、カルタ②は昆虫、カルタ③は星・星座、カルタ④は夏の植物といった具合だ。絵札のイラストは、社内のスタッフが描いている。いかにも子ども向けというわけではなく、それでいてわかりやすい図柄で工夫されている。
小学3年の「読むタンバリン」は、国語の物語読解と心情語の学習がセットになった教材。小説文に出てくる心情は、小学生にとってはなかなか理解しづらい。たとえば、ある日の題材は「サーカスのライオン」。少年とサーカスのライオンの交流を描いた物語文である。
このストーリー読解のカギとなる、いくつかの「気持ち(心情)」が抽出され、まずテキストの冒頭に収録されている。この回の心情語は「焦る、尊敬する、はりきる」の3つ。授業後、これらの心情について自宅で家族にインタビューをして、それを書いてくるのが宿題となる。家族との会話として心情を聞くことで、単なる知識ではなく、経験として理解していく。
小学3年の算数では、紙の教材以外にタブレットも学習に取り入れている。タブレット学習では、専用のアプリで立体図形などを学習していく。立体図形は紙の上だとイメージがつかみにくいが、タブレットでは立体図形が具象化されて表示され、画面をスワイプして回転させることもできる。そのため、生徒も立体をイメージしやすく、どこをどう切り取るとどうなるかといったことを擬似的に何度も体験できる。パズルゲーム感覚で学習ができるのだ。
授業にはメイン講師だけでなく、アシスタント講師も
小学3年向けの受験準備コース「小3Think!Think!」の授業を見学した。
「気力が十分な前半のうちに、負荷が高めな国語系の内容に取り組みます。後半からは、計算やパズル要素の高い問題など、子どもたちが手を動かしたくなる問題をどんどん扱います」(仁木さん)
国語の物語文で心情について学ぶ際には、講師が身振り手振りでわかりやすく心情を説明していく。
生徒が問題を解く時は、メインの講師とアシスタント講師が一人ひとりの様子に目を配り、随時フォローしていく。1クラス10人から20人ほどで、授業を進める講師以外にアシスタント講師がつく。
20人以上の大人数の授業の場合はアシスタント講師が2人つく。たとえば、どのページかわからない生徒がいたらフォローしたり、集中できない生徒がいたら声をかけたりする。
このきめ細かいフォローにより、活気がある授業でありながら、学級崩壊のリスクが低くなる。そのため、落ち着いて授業を受けたい女子もストレスがない。なお、席順は塾側が指定する。
生徒が楽しく学習できるような指導を徹底

「講師の採用の基準として、花まる学習会の理念を理解してくれることを最優先します。生徒が楽しく勉強し、幸福な気持ちでいられるような指導を志せることが大切です。ですから、講師としてキャリアがあっても、その理念をわかってくれない場合は採用はしません」(松島さん)
「褒めて伸ばす」方針の花まる学習会の系列なので、スクールFCでも講師は生徒が楽しく学習できるように導く。高圧的な指導はせず、子どもの視点に立った授業を行う。
吉祥寺校の授業では、「胸が熱くなる」という表現を動作や表情をつけて説明していた。まるで舞台を見ているような感覚もあり、生徒は楽しみながら知識をインプットしていく。
講師には全員ニックネームがあり、前出の仁木さんは「ボンバー」と生徒から呼ばれていた。小学4年まではニックネームで呼ばれることも多い。生徒と講師の距離が近いことから、質問もしやすくなる。
子どもにあわせた複数のコースを用意
小学4年は「総合コース」。中学受験対応のカリキュラムだが、中学受験を目指す生徒もそうではない生徒も同じカリキュラムで学ぶ。小学5年以降は「中学受験コース」と「総合コース」に分かれ、一部の校舎で小学6年のみ「公立中高一貫校受検コース」もある。公立中高一貫校の対策のみだと私立受験の選択肢が狭まることがあり、私立中学の対策をメインにしつつ公立中高一貫校の対策をするケースも多いが、スクールFCもその方針になりつつある。
また、選抜制の難関対策「シグマコース」も設置している。小学4年は算数が得意な生徒のための「シグマ算数クラス」。カリキュラムは通常クラスと同じだが、より深く掘り下げた内容を扱う。小学5年からは4教科の「シグマコース」が始まり、選抜制となる。
スクールFCに合う生徒・合わない生徒
今の中学受験塾はどこもオーバースペック気味であることに違和感を持ち、「ちょうどいい難易度」の学習を求める保護者には合う塾だろう。一方で、子どもの幸福感を最優先する方針であるため、「ほかを犠牲にしても最難関校に入れてほしい」と希望する保護者の場合、合わないこともあるだろう。
スクールFCの基本情報
校舎数 |
15校(2025年7月現在) ・お茶の水校・巣鴨校・門前仲町校 ・用賀校・自由が丘校・大森校 ・吉祥寺校・石神井校・南浦和校 ・北浦和校・あざみ野校・東戸塚校 ・辻堂校・本八幡校・オンライン校 |
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生徒数 | 2,229名(2025年7月現在) |
自習室の有無 | あり |
質問対応 | あり |
授業の生徒数 | 1クラス10~20名 |
生徒の男女比 | ほぼ1:1 |
授業料 (2025年度) |
【小3】 |