なぜ通信教育学習のZ会が教室か
Z会は通信教育として知名度が高い。だが、通信教育で勉強する生徒たちから「受験前の最後の仕上げはリアル授業を受けたい」「不得意な科目だけは先生に直接教わりたい」という要望があり、まずは高校入試対策でリアル教室での指導を始め、その後、大学入試対策でも授業をするようになった。当初は通信教育の教材を使って教室で授業をしていたが、現在は教室用のオリジナルテキストを使用する。
今でも通信教育で勉強してきた生徒が教室への通塾に切り替えることがあるが、最初から教室に通うケースも増えている。高校入試対策のためにZ会の教室(Z会進学教室(首都圏))に通っていた生徒が、高校入学後もそのまま通塾を続けることが多いため、難関都立の生徒たちの姿が目立つ。一方で、私立中高一貫校の生徒たちも通ってくるため、それらの生徒のために中学1年から大学受験に向けての授業を行っている。なお、クラスは「通常クラス」と「選抜クラス」がある。
授業は少数制で、復習を重視

1クラスは15人~20人ほど。予習も重要だが、復習重視で授業を行っていく。
「入試問題を解くためのテクニックや『ここが頻出分野だ』といったことを教えるのではなく、大学での学びにつながる本質的なことや、多角的に見る視点を教えていきます」(Z会東大進学教室代表・渋谷教室教室長 冨崎暁彦さん)
例えば、数学の場合は1つの問題でいくつもの解き方をみなで考えていく。世界史では知識をやみくもに覚えさせるほうが入試対策としては効率的だが、それをせず、歴史上で起こった事柄を多角的に見ていく。
「一例として、ある国が栄えたとします。その理由はなんなのか。近くに川や海があったといった単純な地理的な要因だけではなく、資源としての鉄が採れやすい環境にあったため、武器や農具に活用することで発展していったというふうに、複数の要因を検証していきます」(冨崎さん)
この物事を多角的に見る作業こそが思考力を伸ばしていく。
教材は独自の入試分析に基づき、基礎から応用まで段階的に学べるように作られている。
また、通信教育が発祥の塾なので、家庭や自習室での自学自習にも重きを置く。例えば高1の数学では、「復習シート」という宿題が出る。記述問題を中心に構成され、講師が丁寧に添削し、生徒の理解度を把握しながら個別フィードバックを行う。
オンライン映像授業も提供され、欠席時の振替受講や自宅学習にも対応。全国どこでも同じ高品質な指導が受けられる。ただ、振替授業はリアルでも受講が可能だ。
予備校などだと、「〇〇講師の現代文Ⅰ」といったように講師の名前が冠につく授業が多い。その場合はその講師の裁量で授業の内容が決まっていくし、テキストもその講師が作る。しかしZ会の場合、講師がオリジナルプリントを作って使用することがあるものの、すべての講師が同じテキストを使い、同じ内容の授業を行う。
テキストの解説が親切
家庭や自習室での自学自習では、授業で学んだことをしっかりと復習していく。授業中に「この問題はやり直しをしよう」と、どこを復習すべきかの指示を出す。その復習をしやすくするために、テキストの解説は丁寧に載せてある。また、宿題は論述が中心になるが、講師がすべてに丁寧な添削をしていく。通信教育からスタートした塾なので、添削の質には定評がある。
講師は全員プロ講師

アルバイト講師はおらず、すべてがプロ講師である。対面教育で40年の歴史がある塾だけあり、指導歴が長いベテランの講師が多い。いわゆる体育会系の熱血授業といった派手さはなく、和やかな雰囲気で理知的な指導をする。女子生徒が多いのは、そういった穏やかさのせいなのかもしれない。講師の質を保つため、校舎を増やす方針はとっていない。
先取りや進度について
中高一貫校コースの場合、進度は学校とそう変わらないが、選抜クラスの場合はやや違ってくる。例えば、数学の関数は中学で一次関数、高校で二次関数を教える。しかし選抜クラスでは、中学で一次関数を学ぶ段階で二次関数にも触れ、知識に連続性を持たせていく。結果、「中学の段階で高校の範囲も教えている」ように見えるが、それはやみくもな先取り学習ではない。あくまでも「関数」という分野の全体像を見せるためのものだ。
大学受験のコースでは、数学に関しては高校1年で2年までの範囲を終わらせる。
「数学に関しては、例えば三角比だけを学んでも全体像が見えません。続けて三角関数にも触れることで、全体像を見せていくことができます」(冨崎さん)
充実した保護者会
学期ごとに行う保護者会では、保護者が把握しておくべきことを伝えていく。高校1年では大学受験に向けた全体の流れを説明。高校2年では受験対策としての科目別学習について、高校3年では「11月以降、生徒は志望校に向けて集中しているので、志望校を変えるとか、併願校をどこにするかといった話し合いは9月までにしてほしい」といった、親子の具体的なコミュニケーションの取り方も伝えていく。
校舎の特徴
Z会東大進学教室の渋谷教室を訪れたが、木目を基調とした落ち着いた雰囲気であり、自習室も大きな窓に面していて、開放感がある。
関東は、Z会東大進学教室として御茶ノ水教室、渋谷教室、新宿教室、池袋教室、Z会進学教室大学受験部として三鷹教室、立川教室、横浜教室、大宮教室がある。関西はZ会の教室(関西圏)として梅田教室、上本町教室、京都教室、神戸三宮教室、西宮北口教室。
Z会に合う生徒・合わない生徒
通信教育が発祥の塾なので、家庭での学習を大切にする。そのため、自分のペースで学習を進めることを得意とする生徒には向いているといえよう。
反対に、塾や予備校内で長時間学習することを希望し、多くの宿題を出してほしい生徒には合わないこともあるだろう。また、難関大学入試の対策をする塾なので、そこをターゲットにしない生徒にはオーバースペックになることもあるだろう。
部活動と両立する生徒が多い
難関大学対策の塾は、宿題の量が多いなどの理由で、部活動との両立が難しい場合もある。しかし、Z会は拘束時間が長くはなく、宿題の量も特段多くないため、部活動と両立する生徒も目立つ。
渋谷教室の自習室では、取材した日にも最難関高校の生徒たちが、高校名の入った部活動のユニフォーム姿で自習をしていた。
Z会東大進学教室/Z会進学教室の基本情報
校舎数 |
7校(2025年10月現在) |
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生徒数 | 約1000名 ※中学受験生を除く(2025年10月現在) |
自習室の有無 | あり |
質問対応 | あり |
授業の生徒数 | 10~20名程度のクラスが多い |
授業料 |
コースによって異なる、公式サイトで公開中 |