7人1組のグループにアシスタント講師がつく
花まる学習会がどういう塾であるかを知るためには、授業を見るのが1番である。今回は門前仲町教室、小学校低学年コースの授業を見学した。
授業は90分(年中・年長コースは60分)で、週1回行われる。
7人1組のグループが5つ。グループひとつひとつにアシスタント講師が一人つく。そのアシスタント講師が宿題や授業中にやるワークをチェックしたり、生徒の様子を確認したりする。
生徒が困っているときはフォローし、集中力を失ってしまっている子には声をかける。鉛筆の持ち方が正しくない生徒がいたらそれも直していく。
課題ができると「できた!」と大きな声で言わせ、活気のある授業だが、アシスタント講師たちがきめ細かく一人一人の生徒を見ているため、学級崩壊しない。
子どもが集中力を保てるよう工夫された授業
アシスタント講師が一人一人を見る一方で、授業を進めるのは司会の教室長だ。この教室長が教室を歩き回りながら、授業を進めていく。
「授業の序盤は3~5分ごとに違う内容を学んでいきます。子どもたちは集中力を保ったまま90分の授業を受けられます」(花まるグループ代表 高濱正伸さん)
四字熟語、計算問題、パズル、名文の暗誦などが次々と様々な学習が繰り広げられる。
「たこマン」という学習では、イラストを見せて次のコマを考えオチを作らせ、それを発表させる。発想力とコミュニケーション能力を鍛えていく。このように「読み書き計算」以外の能力も鍛えていくのが花まる学習会の特徴だ。
後半になると、ホワイトボードの前に子どもたちを集めて、思考力問題を解いていく。その後はワークの時間になり、子どもたちは自分に合ったワークに個々に取り組む。
授業が終わると、迎えにきた保護者に司会の講師がその日の学習についても説明する。
幼児や低学年のうちは「やかましい」「落ちつきがない」のは当然であり、それを「静かにじっとして」とすることを強制しない。反省させるのではなく、次はより良くするように目指させる。
生徒たちは声を出したり、動いたりしながらもしっかりと学習していく。発散して集中する、を繰り返す授業スタイルで、子どもたちが飽きることはない。
授業を盛り上げる「エンターテイナー」としての講師
花まる学習会の方針を理解できることを最優先する。
授業でメインの講師は講義をするというよりも、生徒たちが自発的に学習をすることの「司会役」である。司会が盛り上げ、生徒たちは楽しみながら学習していく。
そのため、いわゆる講義式の授業をするのとは違うエンターテイナーとしての能力も求められる。
また、授業では各グループにアシスタントの講師がつく。これらのアシスタント講師は主婦だったり学生だったりする。
細かく分かれたテキスト
授業の冒頭では3~5分ごとに違う内容を学んでいく。そのひとつひとつにテキストが作られる。どれも薄いテキストなので持ち運びの負担も少ない。
算数は計算教材『サボテン』、パズル問題『なぞぺ―』、国語の精読教材『さくら』、古典素読教材『たんぽぽ』、書き写し教材『あさがお』といったように細かく分かれている。
授業では数分ごとに違う内容を学ぶので、その都度違うテキストを取り出していく。
タブレット教材は使用しないが、木製のパズルを使用し、図形の学習もする。図形などの思考力問題を扱うのが「なぞぺ―」。さらに難しい問題に挑戦できるのが「レインボータイム」という教材だ。「レインボータイム」では難関中学の入試問題レベルの思考力パズルも扱う。
人間力を育む魅力的な野外体験
花まる学習会の最大の特徴は野外体験の実施だ。30年間の開催実績を持ち、年間およそ1万人が参加している。
「徹底して下調べをし、準備をしてプログラムを組んでいくので、危険がないように万全の体制で取り組んでいます」
30年間続いているということはそれだけ事故が起きていないということである。
現在、この野外体験には花まるグループの会員しか参加できない。
各地の自然が溢れる地域に宿泊し、ゲームやテレビもなし、携帯電話も持ち込み禁止でいつもと違う環境で過ごす。
無人島に行くときにはテントを張って寝る場所を確保する。水道がないから海水を汲んで、ドラム缶でお湯を沸かして風呂に入る。食事も自分たちで作ったものを食べる。
また、同じ教室の同学年の子が同じ班にならないようにし、友達同士での参加がないようにする。初対面同士で集団行動をすればもめごとも起きる。それを「もめごとは肥やし」と考える。
親元から離れたところで、見知らぬ同世代と接し、ぶつかって泣いて、力を合わせて笑う。そういった人間同士の葛藤や交流も経験させることで、他者への想像力を育てていく。
また、親子で参加できる野外体験もあり、日帰りで「花まるサムライ合戦」に参加できる。「花まるサムライ合戦」はチームに分かれ、スポンジの刀で相手の太ももにつけた紙風船を割ろうとするゲームだ。
チームワークや相手チームへの敬意などを身につけさせていく。保護者が参加する場合は「大人の本気を見せる」ことでより、親子の絆を強めていく。
大自然の中での体験は危険を伴うため、経験値やハウツーが必要で、「花まるにしか提供できない野外体験」だ。
野外活動だけでない様々なイベント
小学生からは、オリジナルゲームで考えながら遊ぶ【国語大会】や【算数大会】、毎週書き続けてきた作文の集大成として一作品を書き上げる【作文コンテスト】、学年ごとの学習の定着度を確認するための【HIT(花まる脳力テスト)】など、様々な特別授業を行う。
花まる学習会に合う生徒・合わない生徒
「子どもが楽しく基礎学力を身につけてくれたら」と願う家庭には合うだろう。
一方で先取り学習をしていくカリキュラムではないから、幼児や小学校の低学年から先取りをバリバリさせたい場合は方針が違ってきそうだ。

