共通テスト後に学校推薦型・総合型選抜に出願するメリット

1.国公立大学の受験回数が増やせる

 国公立大学の合格が難しい大きな理由の一つに受験回数の少なさが挙げられます。国公立の受験は基本的に前期日程と後期日程の2回で、後期日程は科目が前期と異なったり、ボーダーが上がったりする傾向が多くあります。そのため、受験生は前期日程を中心に考えていきます。

 そんな中で一般選抜よりも前に受験回数が増やせることは、非常に大きなメリットになります。もちろんもし不合格になっても、一般選抜は通常通り受験できます。

2.一般選抜に集中しながら推薦型や総合型を受験できる

 国公立の共通テストを課さない学校推薦型や総合型は、小論文や事前課題など、一般選抜の前期日程で出題される試験とは異なる試験内容になることが多くあります。そのため、学校推薦型や総合型対策に時間を多く取ることで、一般選抜で必要な勉強時間が減ってしまい、両方とも落ちてしまうというリスクもあります。

 一方、共通テストを課す学校推薦型や総合型は、共通テストの配点も高いことが多いため、一般選抜をメインで考えながら受験することができます。

3.二次試験不要なので、共通テスト逃げ切りができる

 難関大学の多くは二次試験の配点比重が共通テストと同じか、共通テストよりも高くなります。共通テストで高得点が取れたとしても、二次試験で簡単に逆転されてしまうことがあります。

 しかし、今回の方法は二次試験を使わずに合否判定を出してくれるため、共通テストでの逃げ切りが可能になります。特に、共通テストの点数が思ったより高かった場合、より上位の大学に挑戦するチャンスが生まれます。この選抜方法を狙って、共通テストを重視して対策する戦略を考えることもできます。

共通テスト後に学校推薦型・総合型選抜に出願する際の注意点

1. 共通テスト後にすぐに締め切りがあるため、事前に準備が必要

 共通テスト後3日以内に出願しないといけない大学もあります。共通テストの結果を見てから考えるとなると、推薦書や志願理由書などの出願書類の準備が間に合わないことがあるため、出願する可能性のある大学は事前に用意をしておく必要があります。

2. 二次試験にない小論文や面接、出願書類に時間を割くことで本来の前期後期の勉強時間が減る

 大学によっては選抜方法に小論文や口頭試問があり、その対策が必要になることがあります。最低でも出願書類は必要になるため、そのまま前期日程の対策をする人よりも使える勉強時間数は減少します。

3.条件に当てはまるか確認しておく必要がある

 同一高校の中で2名までしか出願できない、資格取得が必須など、大学によって出願条件は異なります。

4.共通テストで必要な科目や配点が一般選抜と異なる場合がある

 前期日程とは異なり、科目数が少なかったり、配点が異なったりする場合があります。これはメリットにもなることがありますが、逆に得点率が下がる可能性もあります。

5.一般選抜の前期日程前に精神的ダメージを負う可能性がある

 もし不合格になると前期日程直前にショックを受けることになるため、精神的に落ち込むのが心配な方は避けるのも戦略です。

共通テスト後に受験できる国公立大学の学校推薦型・総合型選抜入試5選

東北大学

大学 実施学部 出願期間 選抜方法
東北大学

文学部・理学部・

工学部等

共通テスト後の1月下旬

※11月下旬頃公開予定

共通テストの成績に加え、

提出書類と面接試験、

学部により筆記試験

 募集要項公開前ですので2025年度の内容をお伝えします。東北大学のAO入試(総合型選抜)Ⅲ期は、現役生だけでなく浪人生も出願できます。学校の成績状況の条件はありません。

 文学部の配点は共通テスト950点、面接試験350点の合計1,300点です。出願書類は条件にはなっていませんが、学校の教科成績、学習成果や活動実績、資格などが評価されます。

 工学部の配点は共通テスト950点、筆記試験100点、面接試験200点の合計1,250点です。筆記試験では論理的思考力や作文能力、英文読解力などについて評価されます。

 このように学部によって内容が異なりますので、学生募集要項で各学部の選抜方法をよく確認しましょう。

※参考: 令和8年度(2026年度)東北大学AO入試(総合型選抜)

横浜国立大学

大学 実施学部 出願期間 選抜方法
横浜国立大学 理工学部

2026年1月19日(月)

~1月23日(金)

共通テストの成績に加え、

提出書類と面接で評価

 横浜国立大学の学校推薦型選抜では、理工学部の化学・生命系学科と数物・電子情報系学科が対象です。

 化学・生命系学科では現役生で学習の成績状況が4.0以上、理科を2科目以上履修した人の条件があり、共通テストと推薦書、調査書、面接によって選抜が行われます。共通テストの配点は一般前期と同じく1,000点満点で、面接や書類との比率は非公開です。

 数物・電子情報系学科は学習の成績状況が4.0以上は同じですが、国語、数学、理科、外国語が4.2以上という条件も追加され、履修条件は理科2科目だけでなく、数学Ⅲと数学Cも含まれます。1校の推薦人数は4名までです。共通テストの配点はこちらも一般前期と同じ1,000点です。

※参考: 横浜国立大学 令和8年度(2026年度)入学者選抜要項

名古屋大学

大学 実施学部 出願期間 選抜方法
名古屋大学 11月下旬頃公開予定

令和8年1月20日(火)

~1月23日(金)

共通テストの成績で合否を決定。

また、学部により提出書類や面接で評価

 名古屋大学の学校推薦型選抜は2025年度の内容をお伝えします。

 例えば、教育学部では現役生で学校の成績条件はありません。ただし各高校から推薦を出せるのは2名までと人数制限があります。第1次選考は共通テストの成績に加え、志願理由書や推薦書、調査書などの書類で判断され、第2次選考で小論文と面接が実施されます。

 法学部では、まず書類選考と共通テストの成績で約30名の合格者を決定します。この約30名はこれだけで面接もなく合格になります。もしここで合格にならなくても、書類選考で面接選考の有資格者になると口頭試問の面接が実施され、約15名の合格者を決定する方法です。

 このように学部によって内容が大きく異なるため、事前に募集要項を細かく確認しておきましょう。

※参考: 令和7年度 名古屋大学 学校推薦型選抜学生募集要項

三重大学

大学 実施学部 出願期間 選抜方法
三重大学 工学部・人文学部

2026年1月20日(火)

~1月26日(月)17時まで

共通テストの指定教科・科目に

書類と面接で評価

 三重大学の学校推薦型選抜では、学習成績概評がB段階(評定平均3.5)以上必要です。人文学部は現役のみ、工学部は卒業後1年以内の場合に出願できます。

 人文学部には文化学科と法律経済学科があります。共通テスト後に出願できるのが推薦Cという選抜方法です。一次選考では共通テストの結果に基づいて募集人員の2倍程度の合格者が発表され、その後の二次選考は調査書、推薦書、志願理由書に加えて面接の結果を総合して行われます。共通テスト420点に対し、面接などは100点の配点で比較的比重が高めです。

 工学部は推薦②という選抜方法で、機械工学コースと情報工学コースがあります。機械工学コースは共通テスト3教科5科目、情報工学コースは6教科8科目を対象とします。両コースとも二次選考では面接があります。機械工学コースの共通テストは英数物化のみと、一般選抜の前期日程と科目数が大きく変わります。

※参考: 三重大学 令和8年度 学校推薦型選抜学生募集要項

岡山大学

大学 実施学部 出願期間 選抜方法
岡山大学 経済学部

2026年1月19日(月)

~1月23日(金)

共通テストの成績、調査書、

面接(口頭試問を含む)

 岡山大学経済学部経済学科の学校推薦型選抜に募集方法Bがあります。出願には現役生で、全体の学習成績の状況が4.3以上必要です。

 配点は共通テスト900点、書類と面接で300点です。注意点は共通テスト前期の科目と異なり、「情報」が得点に入らないことと、面接には口頭試問が含まれることです。

※参考: 岡山大学 2026年度学生募集要項 学校推薦型選抜

まとめ

 今回ご紹介したように、共通テスト後の入試は一般入試だけではありません。出願期間は短いですが、事前に幅広い大学の情報を確認して、準備しておけば可能性は大きく広がります。ここで取り上げた制度は一般選抜ではなく、面接や調査書なども選抜方法に含まれるため、もし共通テストの結果が思うようにいかなかった場合でも、諦めずに挑戦してみましょう。

 出願期間などは2025年度の募集要項を参考にした大学があり、それらの大学では今後情報が公開されるので、志望校の募集要項を随時確認し、自分に合った入試方式を見つけて、最後まで諦めずに受験に挑んでください。