早稲田大学は共通テストを入学試験で活用

【表1】のように、早稲田大学の文系学部では商学部を除き、大学入学共通テストを入学試験で活用しています。

【表1】早稲田大学の入試

【表1】早稲田大学の入試
※早稲田大学入試要項(2026年度)をもとに東京個別指導学院が作成しています。ただし、2027年度以降の入試変更点は、早稲田大学HP「入試の変更点」をもとに、変更年度を明記して、東京個別指導学院が作成しています。

早稲田大学政治経済学部で6教科7科目入試導入へ

 2025年12月11日、早稲田大学の看板学部ともいえる政治経済学部は、2028年度入試(2028年4月入学者募集)以降の大学入学共通テストのみを利用する入試で、大学入学共通テスト全教科(『国語』『数学』『英語』『地理歴史・公民』『理科』『情報』)の受験を必須化すると発表しました。2027年度入試までは『英語』『数学』『国語』が必須(各200点満点)に加えて『地歴・公民』『理科』『情報』から2教科2科目選択(各100点満点)でしたが、2028年度入試からは、『英語』『数学』『国語』が必須(各200点満点)に加えて『地歴・公民』『理科』『情報』から各1科目(計300点)となります。

 これは、文系学部であっても、『理科』『情報』を含めてまんべんなく基礎学力のある学生を入学させたいという大学側からのメッセージだといえます。そして、6教科7科目型への変更により難関国立大学志望者が併願しやすい(難関国立大志望者に有利な)入試となります。

国際教養学部では数学必須入試導入

 また、2027年度入試以降の早稲田大学国際教養学部では、大学入学共通テスト利用入試(大学入学共通テスト+英語4技能テスト利用方式)を導入します。これは、所定の要件(英検®ならば1級合格)を満たす英語4技能テストのスコア証明書を提出した受験者を対象に、大学入学共通テスト(『国語』『数学』各200点)の結果で合否判定を行うものです。国際教養学部というと文系学部の印象がありますが、大学入学共通テストの『数学』(数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C)を必須としている点が注目されます。

【表1】のように、大学入学共通テストを利用する入試では、文系学部であっても国際教養学部同様、『数学』を必須とする入試を設けている学部(政治経済学部・法学部・社会科学部・人間科学部)が少なくありません。大学入学共通テストで課す科目に『情報Ⅰ』を追加する学部が増えている点とともに、社会的要請に応えたものであるといえます。

早稲田大学が大学入学共通テストを積極的に活用するワケ

 早稲田大学は大学入学共通テストの前身となる大学入試センター試験への参入は1999年度と遅かったのですが、大学入学共通テスト開始(2021年度)を機に積極的に活用するようになりました。大学入学共通テストは「知識・技能」を問う問題が多かった大学入試センター試験よりも、「思考力・判断力・表現力」を問う問題が増え、早稲田大学が求める最低限身につけておいてほしい学力が測れると判断したからではないでしょうか

 この結果、文系学部では、大学入学共通テストと学部独自試験を組み合わせる方式へと大幅に改編しています。これは、基礎学力は、大学入学共通テストで測り、各学部が問いたい力を個別試験で問うというスタイルです。

【図2】のように、早稲田大学は大学入学共通テストの結果のみで合格者を決定する方式の募集人員の割合(赤)が極端に少なく、大学入学共通テスト+個別入試(紫)の割合が大きいことがわかります。

【図2】2026年度一般選抜 入試方式別募集人員の割合

【図2】2026年度一般選抜 入試方式別募集人員の割合
※ベネッセコーポレーション「入試科目一覧」をもとに東京個別指導学院が作成。

 また、早稲田大学は、一般選抜だけではなく、総合型選抜の『地域探究・貢献入試』でも、論理的思考力を問う「総合試験」を突破した受験生の中から、大学入学共通テスト8割以上の得点がとれるかどうかで最終合格者を決めます。このように、文系学部では商学部を除いて、大学入学共通テストを利用した入試を何らかの形で取り入れています

 そして、合否には関係しませんが、国際教養学部を除く、全ての学部の指定校推薦合格者には入学手続きの一環として大学入学共通テスト『英語』『国語」『数学Ⅰ、数学A』の受験が必須となっています。

 早稲田大学では、近年入試変更が活発で、ここまでで紹介してきた内容以外にも、評価方法の見直しをしたり、出願資格で高校での科目履修条件を細分化したりするなど、年々変化しています。

 30年前は、難問を解ける力、処理速度の速さや知識量の豊富さをモノサシとして合格者を決めていました。しかし、現在は、大学入学共通テストが解けるレベルの偏りのない基礎学力+思考力・判断力・表現力(学部独自問題)+学部適性&学習履歴(主に「地域探究・貢献入試」)をモノサシとしているように思います。

 一般選抜や指定校推薦・内部進学等では、バランスのとれた学生を、総合型選抜では、突出した活動・探究履歴のある学生を求めているのではないでしょうか。

大学入試センター試験に真っ先に参加した慶應義塾大学

 私立大のもう一方の雄である、慶應義塾大学は、早稲田大学と別の動きを見せています。

【表3】のように、慶應義塾大学は一部の学部を除いては一般選抜では1入試方式の学部が多くなっています。一般選抜で、複数の入試方式を設けている学部もありますが、入試日は同じなので併願ができないようになっています

 慶應義塾大学は、大学入試センター試験初年度の1990年から入試に活用(法学部と医学部)していました。1990年度の大学入試センター試験への私立大学参加は、わずか16大学でしたから、先駆けといえます。これは、当時、臨時教育審議会会長代理、大学審議会(現・中央教育審議会大学分科会)会長等を歴任した石川忠雄慶應義塾塾長(当時)が進める入試も含めた大学改革への率先した取り組み姿勢を示す必要もあったと考えられます。

 しかし、医学部は2006年度から廃止、法学部と薬学部は2012年度から廃止されています。最も長くセンター利用入試を続けた法学部の場合、当時既存のAO入試(現行のFIT入試:法律学科、政治学科それぞれ最大30人、計60人)にA方式の募集人員100人(法律学科、政治学科それぞれ50人)を充て、全国を6ブロック(九州・沖縄/中国・四国/近畿/東海・北陸/関東・甲信越/東北・北海道)に分け、学科ごとに各ブロック最大10人ずつ、計120人をAO入試の「地域ブロック枠」で募集しました。こうすることで全国から受験生を集めようとしたわけです。

 大学入試センター試験よりもさらに、思考力・判断力・表現力を問う問題が増えた大学入学共通テストが導入されてからは、慶應義塾大学は全学部とも参加していません

【表3】慶應義塾大学の入試

【表3】慶應義塾大学の入試
※慶応義塾大学入試要項(2026年度)をもとに東京個別指導学院が作成しています。ただし、2027年度以降の入試変更点は、慶應義塾大学HP「学部入学案内 - 入試の変更点」をもとに、変更年度を明記して、東京個別指導学院が作成しています。

 慶應義塾大学の大学入試センター試験からの撤退理由は、大学入試センター試験で慶應義塾大学に合格できる受験生の多くは、東京大学などの国立最難関大学に合格できる受験生(つまり、慶應義塾大学が第一志望大ではない受験生)が多く、「大学独自入試」に比べて慶應義塾大学への入学意欲や帰属意識が薄いと判断した可能性と、大学入試センター試験や大学入学共通テストのような画一的な試験形式と難易度では、大学側が入学してほしい学生をとれず、入試方針に合わないと判断した可能性があります。

 その結果、「慶應に入学したい学生を、慶應自身が選ぶ」(「慶應らしい学生を、慶應自身が選ぶ」)に回帰したのではないでしょうか。その一つの事例が、一般選抜で『国語』ではなく『小論文』を課す学部が10学部中7学部(文学部・法学部・経済学部・商学部A・環境情報学部・総合政策学部・看護医療学部)にのぼっている点です。

慶應義塾大学でも入試変更が始まっている

 2027年2月に実施される経済学部一般選抜から、小論文を休止し、数学と歴史の試験時間と配点を拡大するとの発表がありました。外国語(英語)や地理歴史の科目では近年、論述問題が一定の割合を占めているため、小論文を課すことにより測ろうとしてきた志願者の能力は、他の科目で測れると判断したためということです。

 入試教科(科目)数が減り、『小論文』対策が必要なくなったため、受験しやすくなったともいえますが、2教科で、より深い理解力と思考力が問われるようになると考えられます。この動きが、今後、他学部にも広がっていくのかどうかが注目されます。

A方式:英語100分200点+数学80分150点+小論文60分70点
    ⇒英語100分200点+数学100分200点

B方式:英語100分200点+歴史80分150点+小論文60分70点
    ⇒英語100分200点+歴史100分200点

 また、2025年度以降、文学部の一般選抜では、外国語の選択科目に「英語(外部試験利用)」を新設しました。慶應義塾大学の入試も少しずつ変化しているのです

非一般選抜にみる早慶の違い

 では、一般選抜以外の入学試験はどうなっているでしょうか。【表4】は慶應義塾大学と早稲田大学の非一般選抜の入試方式別入学者数と構成比率(分母は総入学者数)です。

【表4】慶應義塾大学と早稲田大学の入試方式別入学者数と構成比率(非一般選抜)

【表4】慶應義塾大学と早稲田大学の入試方式別入学者数と構成比率(非一般選抜)
※年は入試年度です。早稲田大学の3か年と慶應義塾大学の2016年・2020年は、旺文社『大学の真の実力 情報公開BOOK』、慶應義塾大学の2025年度は同大学HP資料と慶應義塾高等学校・慶應義塾女子高等学校・慶應義塾湘南藤沢高等部・慶應義塾志木高等学校・慶應義塾ニューヨーク学院のHPをもとに東京個別指導学院が作成。慶應義塾大学の2025年度入試で公募推薦が0となっているのは、文学部の「自主応募制による推薦入学者選考」合格者116名が大学HPで総合型選抜に区分されているため、総合型選抜に算入しています。

 総合型選抜(旧AO入試)は、1990年に慶應義塾大学(総合政策学部・環境情報学部)が導入した『AO入試』がはじまりで、法学部の『FIT入試』、理工学部の『分野志向入試』など拡大していきました。これはまさに慶應義塾大学のアドミッションポリシーに適合した学生を集めようという入試です。早稲田大学も『地域探究・貢献入試』『全国自己推薦入試』『AO入試』『FACT入試』等多彩な総合型選抜入試を実施し、総合型選抜での入学者数や入学者比率は上がってきています。しかし、人数面でも入学者比率面でも、まだ慶應義塾大には及びません

 一方、指定校推薦は、人数面でも入学者比率の面でも早稲田大学が慶應義塾大学を上回り、幅広く多くの入学者を集めていることがわかります。

 系列校からの入学者数は、ほぼ同じですが、早稲田大学の方は慶應義塾大学より入学者総数が多いため、入学者比率では慶應義塾大学が高くなっています。しかし、早稲田大阪高等学校は2025年度入学生より、早稲田大学特別推薦枠が現行の39枠から74枠に増枠、早稲田佐賀高等学校も早稲田大学への学校推薦型選抜入試における推薦枠を年々増やしており2023年春卒業生の120枠から2027年度卒業生は148枠へと拡大することになっており、全国から多様な学生を集めようという狙いがうかがえます

早慶は別の道を歩んでいる

 30年前の慶應義塾大学入試はすでに、「慶應らしい学生を、慶應自身が選ぶ」という思想を確立していました。現在もその本質は、ほとんど変えていないことがわかります。

 一方の雄である早稲田大学も30年前は、慶應義塾大学同様に「早稲田は早稲田の問題で選ぶ」姿勢でしたが、これまで記してきたように、両大学の入試方式(学生募集)の考え方が異なります

 早稲田大学は大隈重信以来「学問の独立」「進取の精神」を掲げ、広く多様な人材を受け入れ、開かれた総合大学として発展してきました。こうした理念が、多様な入試方式(大学入学共通テストの活用・英語資格検定の活用・独自試験・総合型選抜・慶應義塾大学の約2.5倍となる指定校推薦枠・首都圏以外の地域も含めた関係校から進学者、など)の併存へつながっています。様々な入り口を用意することで、入学者の多様化も質を担保しようとしているように思います

 一方の慶應義塾大学は、福澤諭吉の「独立自尊」「実学の精神」を基盤に、思考力・論述力・表現力を重視する選抜を行っています。一般選抜での大学独自試験の特徴は先に述べた通りで、自分の頭で考え(構想力、因果関係を把握する力)、説得的な文章を書く力を測る傾向が強いのです。慶應義塾大学は、大学入学共通テスト非採用を堅持しつつ、独自試験の質を高める方向に向かっています。これは、慶應義塾大学が「思考・表現」を直接測定することに特に価値を置くためだと思われます。

 また、総合型選抜でも出願要件を第一志望者(合格したら必ず入学する)に限るなど、慶應義塾で学びたい受験生を集めようとしています。指定校推薦の枠は早稲田大学より少なく、抑え気味です。反対に、小学校から大学院までを擁する総合学塾として一貫教育を行うため、内部進学の比率も早稲田大学よりも大きくしており、「慶應義塾生」らしさへのこだわりが強いように思います。

 昨今、某予備校の集計で早稲田大学と慶應義塾大学の両方に合格した受験生の進学先調査で早稲田大学が慶應義塾大学を上回ったというニュースが話題を呼びました。

 早稲田大学は、大学入学共通テストを活用する入試を拡大していった結果、最難関国立大学志望者が早稲田大学を併願しやすくなりました。最難関国立大学の併願大学として早稲田大学を受験する層にとっては、同じくらいの学力の受験生が増えることによって、早稲田大学を受験・進学先として選びやすくなっているのではないでしょうか。また、早稲田大学は、一般選抜での募集定員縮小を進めており、2025年度一般選抜での募集定員は、2018年度で89.8%(慶應義塾大学は96.5%)と絞り込んでいます。これにより入学難易度が上昇している可能性があります。

 個人的には、2032年には150周年を迎える早稲田大学が、それに向けた中長期計画として、2012年に策定した「Waseda Vision 150」の一環として実施している入試改革への取り組みが世間に浸透し、「時代の変化に応じて改革を進めている早稲田大学」というイメージが高まり、早稲田大学選択者の割合が増えたのではないかと思います

 これに対して、慶應義塾大学は「慶應義塾 中期計画2022-2026」の「入学者選抜」の項で「志願者の多様な関心・能力・経験・背景を適切に評価する新たな選抜形態を開発する」とありますが、早稲田大学ほどの大きな変革もない(それゆえ話題性にも欠いた)ことも早稲田大学に逆転された一因ではないでしょうか。

 20年後・30年後にはどちらの大学の評価や評判が高いのかは、予想できません。早稲田大学も慶應義塾大学も20~30年後も私立大学を牽引する存在であると思われますし、両大学への入学のハードルは、一般選抜・非一般選抜とも急激に低くなることはないと思われます。

 大学受験生には、目先の評判・ブランドに流されることなく、両大学の研究内容や教授陣、サポート体制、卒業後の進路などを丁寧に調べ、可能な限り実際に足を運んで施設や研究室を確認し、空気感や雰囲気を感じ取って自分で大学選びをしてほしいと思います。

 いずれにせよ、早稲田大学も慶應義塾大学も簡単に合格できる大学ではありませんし、この記事で触れてきたように入試内容も大きく異なります。各大学に合わせた早期からの受験対策と入試変更等の情報を敏感にキャッチしておくことが必要でしょう。