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オラクルが対SAP訴訟で見せる
HPへの露骨な対抗心の裏側

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第120回】 2010年11月10日
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 現在、テクノロジー業界で進行中の最大のドラマは、オラクルとSAPの訴訟問題だろう。もともとはオラクルが自社のIP (知的所有権)をSAPの子会社に侵害されたとして起こした訴訟だが、今や完全に敵を叩きつぶすためのPR戦争と化している。

 企業向けソフトウェア大手のオラクルが、ドイツに本拠を置くライバル企業のSAPを訴えたのは2007年のことだ。SAPが買収したトゥモローナウ(TomorrowNow。2008年10月末で営業停止)が、オラクルのソフトを違法にダウンロードしたというのがオラクル側の主張である。

 トゥモローナウは、オラクルのソフトを利用する企業にメンテナンスなどのサポートを提供するサードパーティ・ベンダーだった。同社がバグの修正を含む通常のメンテナンスを超えて、ソフトのソースコードやアプリケーションを入手し、自分たちのビジネスに利用したため、オラクルは客を取られ収入の機会を失ったというのだ。

 訴訟内容は10項目にわたるが、SAPはオラクルの訴訟費用を負担する代わりに、オラクルがIP侵害など違法行為に関する項目を取り下げるよう交渉した。SAPはトゥモローナウによる不適切な行為を認めた上で賠償額の設定に移ろうとした。裁判をとにかく早く切り上げて、長々と汚名を押し付けられるのを避けたいという考えだったのだろう。

 ところがその後、対立はさらにエスカレートしていく。

 そもそも両社が考える賠償額には、大きな開きがあった。オラクルが要求する賠償額は20億ドル。対するSAPは、せいぜい4000万ドルが妥当だとしている。50倍もの開きがあるのだ。

 SAPがトゥモローナウを買収したのは、オラクルがピープルソフトという同業者を買収して間もないことであり、SAPはピープルソフトの顧客を奪うためにトゥモローナウによるIP侵害を通して多数の顧客に便宜を図ってアピールした、とオラクルはいう。

 その上、オラクルはこの訴訟問題をきっかけに、“口撃”の矛先を仇敵のヒューレット・パッカード(HP)にまで向け始めている。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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