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佐高 信の「一人一話」

97歳で反骨を貫く現役俳人 金子兜太

佐高 信 [評論家]
【第54回】 2016年9月12日
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 昨年夏、国会を取り巻いた安保法制反対デモの中に「アベ政治を許さない」と書かれた紙を掲げる人たちが目立った。それはいまも続いているが、あの字を書いたのは9月23日に97歳となる現役俳人の金子兜太(とうた)である。1919年に生まれた金子の前年に田中角栄と中曽根康弘が生まれている。

「お前は兜太ではなく与太」

 金子とは何度か対談しているが、『俳句界』の2009年1月号では、中国に招かれた時、会場で金子の名前が呼ばれるたびに、場内に何ともくすぐったいような笑いの雰囲気が漂ったことを披露していた。

 「悪意とは思えないけど、どうしてでしょう」と尋ねたら、こう明かされた。

 “兜”という字が中国語の発音の具合で“褌”になるので、“褌、太い”と聞こえる。しかも苗字が金子だからソノモノだ、と。

 「ははあ(笑)」と私は受け応えするしかなかった。

 金子の父親は政治家にしたくて兜という字をつけたらしい。

 母親は最後まで「俳句なんて毒にも薬にもならないものをやってとんでもない。お前は兜太ではなく与太だ」と言っていたという。

 それで金子は悔やしまぎれに

○夏の山国母いて吾を与太という 

 という句をつくった。

父が金子を選んだ偶然に驚く

 金子より10歳上の私の父が、90歳の時に郷里の山形県酒田市で「かな書作展」を開いた。一応、日展入選5回の書家だったのだが、その元気さに感謝しながら作品を見て歩いて、ある色紙額の前で足が止まった。そこには、

○冬青しヒマラヤ越ゆる風の鳥

 という金子の句が書いてある。

 私が金子と何度か会い、手紙も遣り取りしていることを父は知らなかった。

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佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

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