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野口悠紀雄 人口減少の経済学

財政赤字の拡大は、公共事業が原因ではない

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第6回】 2010年11月19日
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 前回から国民経済計算の所得支出勘定における「貯蓄」や、資本調達勘定における「純貸出/純借入」について論じている。

 国民経済計算における資本調達勘定では、(今回検討する一般政府だけでなく、すべての部門について)実物取引と金融取引の2つの取引が記録されている。

 実物勘定における貯蓄と投資の差は「純貸出/純借入」と表示されており、金融勘定における差は、「純貸出/純借入(資金過不足)」と表示されている。これらは本来は一致するはずであるが、実物面の統計と金融面の統計は計数が異なるので、若干の差が生じる。ただし、大まかに言えば同じ傾向を示すので、この差はあまり気にしなくてよいだろう。ここでは、主として実物取引を見ることにする。

 一般政府の純借入は、財政赤字と同一である。そして、これはしばしば問題とされ言及されるので、なじみやすいデータとなっている。したがって、以下では、「財政赤字」という表現も用いることにする。

 国民経済計算では、政府部門を「一般政府」と「公的企業」に分けている。後者は事業特別会計などだ。これは、「法人企業部門」に含まれる。それ以外が「一般政府」とされる。ここには、国や地方の一般会計や、社会保障特別会計などが含まれる。以下では、一般政府の計数を見ることとする。

政府赤字が拡大した原因は政府貯蓄の減少

 まず、一般政府資本調達勘定の実物取引を見よう。1980年代からの推移は、【図表1】に示すとおりだ(注1)

 「純貸出」(=純貯蓄+純資本移転-固定資本形成+固定資本減耗-在庫品増加-土地の購入)は、1990年代の初めから98年度まで顕著に減少した。その後マイナス30-40兆円の水準が続いたが、06年度には改善した。07年度には再び悪化している。

 純貸出が減少した最大の原因は、貯蓄が減少したことである。

 1980-90年代において貯蓄はプラスだったが、98年度からマイナスに転じ、03年度までマイナス幅が拡大を続けた。その後拡大はやや鈍化したが、依然として大きなマイナスになっている。

 一方で、一般政府の総固定資本形成は、90年代後半から減少を続けたことに注意が必要である。2007年度の値は、1996年度の値のほぼ半分にまで縮小している。道路整備事業特別会計などの公共事業関連特別会計は一般政府の中に含まれているので、これは、公共事業が圧縮されたことを示している。

(注1)【図表1】の計数は、内閣府ホームページ「平成20年度国民経済計算」による。これは、以下で用いる『国民経済計算年報 平成21年度版』の値とは若干異なる。ただし、傾向は同じである。ウエブの計数は一次所得バランスの内訳などの詳細が分からないため、年報の数字を用いる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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