2010年11月17日(水)午後2時50分~午後3時15分、米LAオートショー(カリフォルニアのロサンゼルス・コンベンション・センター)の報道陣向けトヨタ自動車発表会――。
電気自動車の量産車、トヨタ「RAV4 EV by TESLA」の世界初披露の直後、壇上に日米欧中のメディアが殺到した。彼らの狙いは、TMS(トヨタ・モーター・セールス:米国におけるトヨタの事業を牽引する実質的な中核会社)のジム・レンツ社長と、電気自動車ベンチャーのテスラ・モーターズのイーロン・マスク社長だ。マスク氏との間を、巨漢のデトロイトの記者に阻まれた筆者は、彼の右肩越しにボイスレコーダーを突っ込んだ。
筆者の右には、日本テレビのロサンゼルス支局の女性カメラマン。左には、小型カメラを持つNHKのニューヨーク支局記者。すぐ後方には、時事通信のシリコンバレー支局記者が聞き耳を立てていた。しかも筆者の頭上には、テレビ収録用マイクやボイスレコーダーが数本差し出されていた。こうした“おしくらまんじゅう”が約10分間続いた。
なぜメディアはここまで必死になるのか。それは「超大手のトヨタがなぜ、関係のなかった新興企業のテスラと組む必要があったのか」「これから2社は一体どうしていくつもりなのか」という素朴な疑問があるからだ。
時計の針をやや巻き戻した同日午後1時45分過ぎには、メディアの輪はホンダのブース壇上にあった。輪の中心に居たのは、ホンダの伊東孝紳社長。しかし、群がるジャーナリストの数はトヨタ・テスラほどではなかった。
それでも、この日以降の日本では、「電気自動車で先行する日産をトヨタとホンダが追撃」「トヨタ、ホンダ、日産が電気自動車で揃い踏み」「電気自動車が量産に向けて本格始動」という報道が目立つようになった。果たしてそれは正しい情勢分析なのか。というのも、筆者がその場(=ぶらさがり会見)で感じた空気はむしろ「トヨタとホンダの歯切れの悪さ」だったからだ。