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安東泰志の真・金融立国論

最高裁判決を検証!資産運用会社の利益相反取引にメス

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第73回】 2016年9月16日
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去る9月6日、最高裁第三小法廷にて、今後東京が国際金融センターたり得るかどうかにも大きく影響する極めて重要な判決が下された。もし、今回の実質的な上告人逆転勝訴の判決がなければ、「日本の資産運用会社は投資家の利益を守らなくてもいい」というに等しい地裁・高裁の判決が確定してしまうところであった。実は、筆者が代表取締役の会社が、この裁判の当事者(上告人)であったので、今回の事案について検証し、実務の参考に供したい。

「利益相反天国」の日本
筆者は警鐘を鳴らしてきた

 筆者は、連載第21回で利益相反天国と言っても過言ではない日本の現状に警鐘を鳴らし、連載第55回の末尾では、本事案についての高裁の判断に苦言を呈した。また、先月掲載された連載第72回では、東京がアジアナンバー1の国際金融センターになるためには投資家の利益が守られなければならないことを強調した経緯にある。

 今回の事案(平成27年(受)第766号)は、既に最高裁判所のHPで判決文が公開されているほか、請求すれば、誰でも固有名詞を含む全記録を閲覧できる。しかし、表面的にはややわかりづらいので、以下に事案の概要をかいつまんで説明する。

 本件の全スキームは、図1(1-1~1-4)の通りであり、少し複雑である。そこで、詳細は図1に譲るとして、こういう複雑なスキームを組んだ結果として何が行われたのかを説明する。

 まず、Y1社は、投資ファンドの運営会社である(本件の場合、投資ファンドは商法上の匿名組合が使われたので、この投資ファンドの運営者のことを、法律的には「営業者」と呼ぶ)。そして、Y2氏はY1社の代表取締役として、この投資ファンドの運営を行なっている。H社は筆者が代表取締役の会社(上告人)で、Y1社が運営する投資ファンドに3億円(のちに一部解約して2億5000万円)出資した。ちなみに、筆者がY1社の運営する投資ファンドに出資した理由は、Y1社の代表者であるY2氏が筆者の昔の上司であり、「たくさんのベンチャー企業に投資をして若い人を助けてあげたい」と虚偽の説明を受け執拗に口説かれたからだった。それまで筆者は、Y2氏は元上司であり良い人だと信じていた。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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