「西洋の歴史では数百年に一度際立った転換が起こる。世界は歴史の境界を越える。社会は数十年をかけて次の新しい時代のために準備する。世界観を変え、価値観を変える。社会構造を変え、政治構造を変える。技術と芸術を変え、機関を変える」(ドラッカー名著集(8)『ポスト資本主義社会』)
1960年代後半に至って、ドラッカーは、あたかも群発地震のようにあらゆるものが動き始めたことには原因があると見た。どこか地中の奥深くで、プレートの大移動が起こっているに違いないと察知し、これを一つの“断絶”としてとらえた。
この断絶を描写した六九年の名著『断絶の時代』は、世界各国において空前の大ベストセラーとなった。
その20年後、北欧文明と地中海文明を分かつアルプスのブレンネル峠のように、歴史にも文明を分かつ“峠”があると論じた。これが転換期の到来を知らせた89年の『新しい現実』だった。
その4年後には『ポスト資本主義社会』で、その峠は「50年から60年は続く」と論じた。ドラッカーに従うならば、われわれは今まさに、その壮大なる歴史の転換期の渦中、しかもそのクライマックスにある。
「境界を越えた後の世代にとっては、祖父母の生きた世界や父母の生まれた世界は、想像することのできないものになる。われわれは今、そのような転換期を経験しつつある。この転換がポスト資本主義社会を創造しつつある」(『ポスト資本主義社会』)