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日本を元気にする経営学教室

元気の源は現場から
「現場重視」を実践する人材とは?
慶應義塾大学ビジネス・スクール校長 河野 宏和

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第25回】 2010年11月29日
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 「先生、生産について分かりやすく書かれている本を教えてもらえませんか?」

 企業の人や学生からよく聞かれる質問である。もちろん、テーマを絞ればいい本はあるし、読んでおくべき論文もある。しかし大抵の場合、「いい本はない」と、答えることにしている。本を読む時間があったら、工場の現場へ行くべき、私はそう信じているからである。なぜそう思っているのか、まずは一つの事例から話をスタートしてみたい。

自動販売機製造ビジネス

 日本では、街中で何か飲みたくなれば、ほとんどどこにでも、自動販売機を見つけることができる。階段を上った駅の改札横、あるいは湖や川の畔など、ありとあらゆる場所に自販機が置かれている。一時期、道路へのはみ出し自販機が社会問題として取り上げられたが、繁華街では何台もの自販機が通路ギリギリに並んでいることも珍しくない。

 では、こうした自販機を製造・販売するビジネスは利益を生んでいるのだろうか? 

 自販機メーカーにとって、納入先(顧客)は飲料メーカーであり、大半が注文生産である。飲料メーカー各社は、消費者にアピールする品揃えや陳列を他社と競い、ほぼ毎年新しい機種を考案し、古い機種を更新していく。高さや幅といった大きさも実に多様である。

 自販機は極端な多品種製品であり、缶やペットボトルの大きさ、陳列ウィンドウのデザイン、はたまた内部機構の多様性により、機種ごとに寸法が微妙に異なる。加えて、飲料メーカーごとに外装のデザインも異なっている。標準化とはおよそ逆方向に進んでいるビジネスである。

 さらに、灼熱の炎天下でも、台風の中でも、吹雪でも、文句一つ言わずに飲料を提供してくれるのが、自販機の特性である。厳しい使用条件を満たす耐久性、さらには現金を蓄えておくという意味でのセキュリティ、最近では品切れを無線で供給拠点に知らせるインテリジェンス在庫管理など、求められる機能水準は年々高度化している。当然に、ビジネスとしては厳しいものになる。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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