経営学教室・特別座談会の第2回をお送りする。第1回では、「現場力」の弱体化に対する厳しい認識が示された。第2回では、まず現場の力を再生させるための視点を議論し、このところ日本企業の戦略の問題点として指摘されることの多い「ガラパゴス化」現象、つまり日本独自の高機能化を追求しすぎて、世界市場に通用しない製品づくりとなってしまったという批判について、論じてもらった。(司会 ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

時代の変遷に流されない
普遍的な基軸は何かを考える

司会 日本企業を巡る市場環境が、大きく変化してきているなかで、かつては日本企業の強さと言われてたものが、マッチングしなくなっている部分がある。では、現場の力を取り戻すためには、どのような視点で臨めばよいのか。製造現場に詳しい河野先生いかがでしょうか。

河野 宏和(こうの ひろかず)「時代の流行に左右されない基軸のようなものを持っておかないと、日々変化していく環境の中で、だんだん自信喪失の状況に陥ってしまう」

河野 すごく難しい課題ですね。どうしても企業の成果は、業績で測られるという側面がある。日本企業の現場の力に言及するときに、私がよく思うことは、業績などのように経営環境に大きく左右される要因を「元気」の尺度として持ち込んでしまうと、あるときにはある業種が元気であり、別のときは別の業種が元気になり、元気と言われる業種に属する企業が、「うちの経営スタイルはこうだ、こうすれば元気になる」と情報発信する機会が多いために、時代と共によいもの、元気さの要因が変遷してしまうということです。

 これは、経営という立場ではある意味仕方がないことですが、一方に、時代の流行に左右されない基軸のようなものを持っておかないと、日々変化していく環境の中で、何がより正しいんだろうかと、唯一の正解を求めていく結果、だんだん自信喪失の状況に陥ってしまう。特に、変化のスピードが速いので、基軸をしっかり持つことは難しくなってきていると感じています。