核の武器化に突き進む
北朝鮮の行動の背景は何か
北朝鮮は本年に入ってから22回にわたりミサイル発射実験を行い、1月および9月に2回の核実験を行った。金正恩体制4年間で核実験は3回、ミサイル発射は35回に及び、父親の金正日時代に行われた2回の核実験と十数回のミサイル発射とは頻度もその内容も大きく異なる。核の武器化に向けてまっしぐらという感がある。日本は北朝鮮の核ミサイルに深刻で直接的な脅威にさらされる。今日の北朝鮮の行動の背景を正確に理解することが日本の対応を決めるために重要である。
まず、北朝鮮は韓、日、米を標的とする核戦力の完成を短期間で行う決意を有しているようである。最近のミサイル実験は韓国、日本、グアムなどを捉える短・中・長距離の射程を持つミサイル、またミサイル発射を探知されにくい潜水艦発射ミサイル(SLBM)、および先制攻撃を受けにくい固形燃料を使ったミサイルや移動式発射台などを使っての実験を行っている。
同時に核実験については小型化した核弾頭の爆発に成功したと伝えられる。北朝鮮が実際に短・中・長距離の核戦力を実戦配備する能力を持つには未だ数年を要するのではないかという見方をする専門家も多いが、他方、そのような能力の完成に向けて着実に進んでいることは明らかなのだろう。北朝鮮にしてみれば、このような能力の完成が米韓に対する万全の抑止力となると考えてのことだろう。
金正日時代にあっては核の開発は当初、米国の攻撃を恐れてか、隠密裏に行われていた。これが徐々に核開発が露呈し、1993~94年頃に第一次核危機と言われる事態になったころは、北朝鮮は米国からの譲歩を引き出すための政治的カードとして核開発を考えているのではないかとさえ思われた。現に1994年に米朝枠組み合意が成り、北朝鮮の核開発は電力供給のために行われているという前提の下でプルトニウムを取り出しにくい2基の軽水炉と当面の重油を提供することで核開発に進むのを止めたと思われた。
しかし、北朝鮮は引き続き隠れて核開発を進めていたのだろう。2005年9月の朝鮮半島非核化に関する六者協議の包括的な合意も、翌2006年10月の北朝鮮による核実験実施により踏みにじられる結果となった。