窓業界が大きな変革期を迎えている。メーカーが工場でガラスとサッシを組み立てた製品を生産し、消費者に直接届けるように変わってきたことで、流通を通さない“中抜き”が進行しているのだ。その動きを加速するのが、新たな断熱性能の表示方式。これによって、販売店の淘汰はますます避けられそうにない。

住宅エコポイントによる追い風で注目され始めた窓。販売店ではガラスとサッシを組み立て施工する。「その家に合った最もよい組み合わせを提供する」

「窓のリフォームはいかがですか」──。東京郊外の住宅地。ゆっくりと動く軽トラックの拡声器から、ちり紙交換のような呼びかけが流れる。

 運転席に座るのは、近くでガラス店を営む稲沢明さん(仮名)。荷台には住宅用の大きな窓ガラスを積み、時折声をかけては真空ガラス(複数枚重ねた特殊ガラス)の断熱性能を、装置を使ってデモンストレーションする。

 稲沢さんの“営業”はそれだけではない。チラシを配るほか、ホームページの問い合わせは毎日欠かさずチェックして返信する。父親が創業してから半世紀がたち、新築請け負いこそゼロになったが、窓のリフォームで年商1億円を売り上げるようになった。

 店を構えて客を待つという従来のガラス店とは、まったく営業スタイルが異なる稲沢さん。それでも、来春起こる業界の秩序を揺るがしかねない出来事に大きな危機感を抱いている。

導入される断熱性能表示ラベル

 それは窓の断熱性能表示制度の改正だ。現在、窓は組み立て前のガラスとサッシの断熱性能をそれぞれ4段階で評価し、星の数で示している。これが2011年4月、完成品である窓としての断熱性能表示に一本化されるのだ。表示を行うのは、ガラスとサッシを組み立てた事業者。ラベルには事業者名またはブランドを併記、窓として品質保証するため責任の所在を明確にする。

 後で説明を加えるが、意味するところは、メーカーによる窓の一体生産と直接販売の加速だ。これまで組み立てを請け負っていたガラス店などの販売店は必要なくなり、卸ともども中抜きされていく公算が大きい。

 すでに兆候はある。サッシ製造のトステムと旭硝子の業界最大手同士の提携がそれだ。「全国に散らばる販売店でサッシとガラスを組み立てるより、メーカーの工場で窓としての完成品を出荷したほうが効率的だ」。トステムの潮田洋一郎会長は今年4月の提携会見でこう強調した。