ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
吉野家ホールディングス会長・安部修仁の僕ならこう考える

「経営者の世襲は悪」という風潮に異議あり!

安部修仁 [吉野家ホールディングス会長]
【第15回】 2016年10月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

優れた創業者が一代で会社を築いた後、必ず問題となるのが後継者選び。「世襲」を単純に悪と捉える人は多いが、むしろ外部人材の登用で大失敗をするケースもある。後継者選びで押さえておくべき要点は、一体どこにあるのだろうか?(吉野家ホールディングス会長 安部修仁、構成/フリージャーナリスト 室谷明津子)

門前の小僧
習わぬ経を読む

 世間一般で「世襲」という言葉が使われるとき、ネガティブな意味を含むことが多いですね。特に政治家に対しては、「世襲議員」と言うと大体が批判的な内容です。「親の七光りで地盤の支持者を受け継いで…」というのがよくあるバッシングですが、果たしてその人物が地元から支持される理由は、「親の七光り」だけなのでしょうか。

「安易に子どもに会社を継がせて、経営が傾くことよりも、もっと恐ろしいのは外部人材登用に失敗して会社を荒らされてしまうこと」――。吉野家ホールディングス・安部修仁会長が自身の豊富な経営体験から、単純な「世襲は悪」議論とはまったく異なる、事業承継のあるべき姿を語る(写真はイメージです)

 子どものころから政治家である親父を見て育ち、尊敬と共に反発や葛藤もありながら、同じ道を志していい政治家になった人はたくさんいます。

 小さいころから政治に関心を持ち、他の人よりも考える機会が多いわけですから、政治家を仕事に選ぶ確率が高くなるのは必然でしょう。地盤がある分、一般の人より有利というのはその通りですが、それだけの理由で政治家になるような理念のない人物であれば、地元といえども有権者の心は離れていくでしょう。

 事業承継においても、まったく同じことがいえます。「世襲=悪」というイメージを持つ人は多いですが、特に中小規模のオーナー企業においては、世襲で事業承継を行うのはいいことだと思います。私の認識では、創業家から後継者が出てうまくいくのがベスト。実力のある第三者が入ってうまくいくのは次に良い結果。世襲をしたがミスマッチだったというのは避けたい結果で、第三者が外から入って事業を食い物にするのが最悪です。

 政治家の例と同じで、創業家の人間は幼いころから、親が事業に心血を注ぐ様子を見ているわけです。創業の歴史を聞き、お客さまへの感謝の心を教えられ、取引先にどういう人がいて、誰を大切にすべきかなども叩き込まれて育ちます。

 「門前の小僧習わぬ経を読む」という言葉が示す通り、平生から見聞きしていたことの影響力というのはとても大きい。そういう意味では、やはり創業家が事業に抱く愛情、情熱というのは、第三者より強いはずです。そういう思いに加えて、経営を実行する能力が備われば、素晴らしいトップになるでしょう。

 しかし、世の中そんなにうまくいくわけではありません。見聞きするのはむしろ、事業承継がスムーズにいかないという話ばかり。なぜ、そうなってしまうのでしょうか。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

安部修仁 [吉野家ホールディングス会長]

あべ・しゅうじ/1949年福岡県生まれ。福岡県立香椎工業高校卒業後、プロのミュージシャンを目指し上京。アルバイトとして吉野家で働く。72年、正社員として吉野家に入社。83年、取締役開発本部長に就任し、管財人の増岡氏とともに会社再建を目指す。92年、吉野家ディー・アンド・シー社長就任。2000年、東証一部に上場。07年、純粋持ち株会社制に移行し、吉野家HD社長に就任。12年、吉野家HD代表取締役会長に就任。2014年5月、吉野家HDの代表取締役を退任。8月、事業会社「吉野家」社長を退任。現在は吉野家HD会長


吉野家ホールディングス会長・安部修仁の僕ならこう考える

アルバイトからトップに上り詰めた「ミスター牛丼」こと吉野家HD安部会長のコラムがスタート。倒産やBSE問題など、数々の逆境を乗り越えて来たカリスマ経営者が、ビジネスや世相についての持論を語ります

「吉野家ホールディングス会長・安部修仁の僕ならこう考える」

⇒バックナンバー一覧