「甘い上司」は実は冷酷だ

 業務命令に従わないなどは論外ですが、適切な行動ができなかったり、十分なパフォーマンスを出さないダメな部下と、それを叱れない甘い中間管理職が増えているという嘆きを経営者からよく聞かされます。経営者でも部下をきちんと叱れない人もいます。「甘い」のです。

 甘い上司は、部下にとっては一見、「優しい」上司のように映るでしょうが、実は全く違います。部下に甘く接する事と、優しく接する事はまったく違うのです。

「甘い」上司と「優しい」上司の違いは何か小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

「甘さ」とはその場しのぎです。「こんなことを言うと、相手はかわいそう」だとか「自分は恨まれるのではないかと」考え、その場をなんとかしのぐのです。

 一方、「優しさ」とは関わる人を中長期的に幸せにすることです。もし、表側が「甘い」というコインがあるとすれば裏側は「冷酷」です。部下を甘やかす上司は部下を成長させることができず、会社に不要な人材を育ててしまうので、結果的には、本人のためにも会社のためにもならず、「冷酷」なのです。

 上司が命じた仕事を、部下が「やれません」「できません」と拒否したとします。経営の大原則として、むちゃなことを命じない限り、業務命令には絶対に従わせなければならないのに、甘い上司はそのような場合に、厳しいことも言えず引いてしまう。「甘い」のです。

 部下の実力をはるかに超えていたり、経験のない仕事をいきなりやらせるのはむちゃですが、実力より少し高いハードルを飛ぶような仕事は部下の成長の糧になりますし、会社としてやってもらわないと困るのです。

 甘い上司は厳しいことを言えません。その場はいいかもしれませんが、ぬるま湯につかっている間に、そのような状況で甘やかされた部下はどんどん同僚に差を付けられ、そのうち「できないやつ」の烙印を押されます。甘い上司は実は冷酷なのです。