ドイツ銀行の株価が不安定な展開に
市場専門家の間で様々な観測
8月下旬以降、一時、ドイツ銀行の株価が不安定な展開になった。動向については、金融市場の専門家の間でも様々な観測が飛び交っている。ドイツ銀行の経営悪化によって、リーマンショックのような世界的な金融危機が再発するとの見方もある。いわゆる“ドイツ銀ショック”の発生だ。
株価下落のきっかけの一つは、8月末のドイツ銀行が他行との経営統合を画策しているとの報道だった。さらに9月15日には、米国の司法省が過去の住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売に絡んで、140億ドル(1.4兆円程度)の支払いをドイツ銀行に要求したことが明らかになった。経営不安に賠償負担が加わって同行への懸念は高まり、株価は急落した。
その後、複数のヘッジファンドがドイツ銀行との取引を停止し、差し入れていた担保を引き揚げたとの報道が伝わると、同行の株価は一段と不安定な展開になった。
ヘッジファンド向けのビジネスは、かねてよりドイツ銀行が強化してきた投資銀行業務の一部だ。トレーディング、証券化、デリバティブ関連の損失の噂が絶えない中、ヘッジファンド向けビジネスは、ある意味では、安定的に収益を確保する"最後の砦"との見方もあった。
そこに問題が生じることは、同行にとってさらに厳しい局面に追い込まれることが懸念される。多くの投資家はそうした懸念を嫌気し、同行の株式の売り方に回った。それが株価をさらに不安定化させる要因になった。
ただ、不良債権問題や事業のリストラ、それに伴う増資などドイツ銀行が抱える問題は、イタリアなど欧州の銀行セクター全体にも当てはまる。今後、さらに金融市場が混乱する場合、各国の金融システムがどの程度耐えられるかは不透明な部分もある。
その意味では、ドイツ銀行など大手金融機関の経営状況の悪化によって、公的支援が不可避な状況に陥る懸念がある。各国の銀行の株価、決算内容、そしてEUや欧州各国が銀行の救済にどのような対応を取るか注意が必要だ。
投資銀行業務を重視した
ドイツ銀行の経営戦略
伝統的に大陸欧州の銀行は、商業銀行、証券、資産運用など幅広い金融サービスを一括して提供するユニバーサルバンキングをビジネスモデルにしてきた。この中でもドイツ銀行は早くから投資銀行ビジネスの強化に注力し、1980年代には英モルガン・グレンフェル、90年代には米バンカース・トラストを買収した。