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ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。
【第24回】 2016年10月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
原田まりる [作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター]

道を選ぶのに、言い訳はいらない【『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』試読版 第18回】

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17歳の女子高生・児嶋アリサはアルバイトの帰り道、「哲学の道」で哲学者・ニーチェと出会って、哲学のことを考え始めます。
そしてお休みの土曜日、またまたやってきたニーチェは、「楽な道と、喜びある道は別……」と話しはじめるのでした。
ニーチェ、キルケゴール、サルトル、ショーペンハウアー、ハイデガー、ヤスパースなど、哲学の偉人たちがぞくぞくと現代的風貌となって京都に現れ、アリサに、“哲学する“とは何か、を教えていく感動の哲学エンタメ小説『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』。今回は、先読み版の第18回めです。

「楽な道と、喜びある道は別……」

 「至高の喜びか。たしかに、自分が出来ることが増えたり、新しい自分を発見できた時は、嬉しくなるよね。陸上始めたばっかの時タイムが縮んでいくの嬉しかったもんな。急に周りがきらきらと煌めいて見えたり、生きていてよかったなと感動しちゃうような時もあったかな」

 「そうだ。己を超える、ということは苦しいこともあるが至高の喜びを感じられることでもあるのだ。
 ニヒルにかまえ、無欲に徹しているのは楽だ。失敗に対して、傷つかずにいられるし、頑張れない自分を正当化も出来るからな。
自分で“自分は無欲だから、欲しいものが手に入らなくても別にいいやー”と暗示をかけて、挑戦せず、周囲に対して批評的に無気力に生きる。心からそうしたいのなら、それでいいだろう。しかし、そのような生き方で心から満足出来るのだろうか?
 私は、思う。たとえ苦しみが繰り返されるとしても、つねに自分自身の殻を破りつづける、挑戦しつづけることでしか、得られない喜びがあるのではないかと。そしてそこで得られる喜びこそ、至高のものである。
 楽しさと喜びは、似ているようで別物だ。つまり楽な道と、喜びある道は別物なのだ」

 「楽な道と、喜びある道は別……」

 「そうだ。何かに迷った時は、自分に問いただせばいい。“いま自分は、楽な道を選びたくて迷っているのか。それとも、喜びある道を選びたくて迷っているのか”。そして、喜びある道を選べばいい」

 「楽したいだけなのに、それを“こっちの選択肢の方が正しい道だ”と自分で自分を騙しちゃうこともあるよね」

 「そうだ。道を選ぶのに、言い訳はいらない。自分の人生に真剣になることも、生きることに真面目になることも、かっこ悪いことではない」

 「うん、ニーチェの言っていることはわかるよ。けど、なんか熱くなるのってちょっと恥ずかしいよね。熱くなって失敗したら恥ずかしいし、失敗しなくても、なんか熱すぎる人見ていると引いちゃうというか、恥ずかしいというか」

 「アリサ、人の目を気にせず、自由に生きればいいだけの話だ。うまくいかないことがあっても、自分を納得させる言い訳を探すことはない。
『深く考えすぎるのは厄介な性格だ』。綺麗事に従う必要もない。欲しいものを隠す必要もない。
 もっとシンプルに子どものように、欲しいものを“欲しい!”と素直になればいいのだ。
 無欲を気取るのは、“貪欲になるのはよくないことだ”と決めつけている自分がいるからだ。
 そんなこと誰が決めた?力への意志のとおり、私たちが力や可能性、権力を欲するのは、悪いことではなく、自然なことだ。誰より速く走りたい、金を稼ぎたい、人から褒められたい、モテたい、タワーマンションに住みたい、優越感に浸りたい。そう思ったとして、どこが悪い?誰に対しての罪悪感だ?無欲を気取って、人生に対して無気力になるより、貪欲に生きればいいのだ。自己保身から無欲になるのはもったいないことだ。
 人生に意味などない。意味がないことを嘆くのではなく、意味がないからこそ、自由に生きるのだ。
『いつも自分自身をいたわることの多いものは、その多いいたわりによって病弱になる。我々を苛酷ならしめるものを讃たたえよう』と私は思う。自分をいたわりすぎることで、自分を弱くしてしまうということを肝に銘じ、苛酷なものをも受け入れていくのだ」

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原田まりる(はらだ・まりる) [作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター]

1985年 京都府生まれ。哲学の道の側で育ち高校生時、 哲学書に出会い感銘を受ける。京都女子大学中退。 著書に、「私の体を鞭打つ言葉」(サンマーク出版)がある。


ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。

17歳の女子高生・児嶋アリサはアルバイトの帰り道、「哲学の道」で哲学者・ニーチェと出会います。哲学のことを何も知らないアリサでしたが、その日をさかいに不思議なことが起こり始めます。キルケゴール、サルトル、ショーペンハウアー、ハイデガーなど、哲学の偉人たちが続々と現代的風貌となって京都に現れ、アリサに、“哲学する“とは何か、を教えていきます。本連載では、話題の小説の中身を試読版としてご紹介します。

 

「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」

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