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就職難・大学3年生のリアル~お“ゆとり”さま訪問日誌

「初対面が苦手なので、経理を志望したいです!」

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第2回】 2010年12月22日
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「簿記、会計が得意だから経理」は本当に正しいのか

 「お!簿記1級の試験どうだった?!」

 授業でのパフォーマンスを見ても、彼なら受かるだろうと思っていたので、「受かりました!」なんて元気な返事が返ってくると勝手に想像していたが、全く元気がない。ただ、元気がないのは、簿記の試験のせいではなく(試験結果はまだだそうだ)、やはり“シューカツ”だった。

 「経理を志望しようと思っているのですが、経理として採用をしてくれる企業ってほとんどないですよね? 大体総合職として採用されるので、最初は営業とかですよね?」
 「そりゃ、そうだ。しかも、就職後40年間ずっと経理マンで行き通す可能性は少ないんじゃない?多くの日本企業では部署異動があるしね」
 「そうですよねえ…(ため息)」

学生にとっての営業職は、「押しこみ販売」のイメージ?

 前期に彼が一度研究室にやってきたときに、簿記1級を受けることは聞いていたため、この学生が比較的簿記や会計が好きであることは明らかだ。

 「でもさあ、なんで経理がいいのさ?」
 「いや、だって、オレ初対面の人と話すのが苦手なので、営業とかは向かないかな、と思って…」
 「“初対面”じゃなきゃ大丈夫なの?」
 「ええ、まあ」

 彼が比較的シャイな学生であることは、私も前期の授業を通じて知っている。ただ、授業中に当てて質問したときのやり取りや、提出される課題からは彼の意思を感じることができた。伝えたいことがあれば、上手ではなくとも、それは相手に伝わる。

 「じゃ、営業でいいじゃん!」

 彼はキョトンとしている。

 「だってさ、初対面の営業で相手がモノやサービスを買ってくれることなんてほとんどないよ。大体そんな製品やサービスでも、10回ぐらい通ってやっと契約だよ。だから、2回目以降なら気がほぐれるのなら、営業でも大丈夫でしょ」
 「…あ、そっか」
 「しかもさ、モノやサービスは均一化が進んでいるから、誰から買っても同じだよね。それなら、この人こそ!という人から買いたいんじゃない? そうなれば、スルメみたいに噛めば噛むほどに味が出る人間にもチャンス大きいじゃん」
 「なるほど~!」

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
保田氏ブログ

 


就職難・大学3年生のリアル~お“ゆとり”さま訪問日誌

北海道のとあるのんびりとした国立大学。就職率は悪くない。ここのビジネススクールで教鞭を執る著者のもとに、毎日やってくる大学3年生の学生たち。就活、進路、恋愛、人生……。不安と悩みを抱えながらも、どこかのどかで牧歌的。そんな彼らは、本当にいわゆる「ゆとり」なのか? リアルな現場の一コマを毎週リポートする。※連載は全9回

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