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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

比ドゥテルテ大統領は中国を本心から“礼賛”しているか

加藤嘉一
【第88回】 2016年10月25日
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中国側はドゥテルテ大統領の滞在期間中、最大限の礼遇をもってもてなしていた Photo:新華社/アフロ

習近平国家主席の招待を受けた
ドゥテルテ大統領の訪中

 「過去の2年間、両国関係の退化はフィリピン国民の利益を損なわせた。地域情勢の安定にも影響を与えた。ドゥテルテ大統領は就任後、中国と友好を再建する選択をし、対話と協力の軌道に戻る意思を表明した。フィリピン国民の願望を体現するものであり、フィリピンの国家・民族利益に符合するものであり、歴史の発展潮流に順応するものである。いかなる人間、いかなる勢力もそれを阻害することは不可能だ。中国は今回のドゥテルテ大統領訪中を高度に重視している。準備は整った」

 2016年10月18日、中国の王毅・外交部長は北京で記者団らにこう語り、同日夜、北京の空港へと向かい、自らドゥテルテ大統領を出迎えた。王毅部長が前回自ら北京の空港で外国元首を出迎えたのは約2年前のこと。対象は米国のオバマ大統領であった。

 今年6月30日にドゥテルテ氏がフィリピン大統領に就任して以来、初となる中国訪問となった今回、習近平国家主席の招待を受けた同大統領による4日間の公式訪問という形式が取られた。

 私は、中国国内がドゥテルテ訪中と、それによって中比関係が大きく改善するという世論に包まれていくのを感じていた。ドゥテルテ大統領が同盟国である米国に対して強硬的な態度を、逆に中国やロシアとの関係改善に期待を寄せる言論を取ってきたのは周知の通りである。

 また、就任から約2週間後という時期に公表された南シナ海問題を巡る仲裁判決を“紙くず”と見なし、「受け入れない、認めない、履行しない」という立場を取ってきた中国政府に対して、ドゥテルテ大統領がアウェイの地で、どのようなスタンスで、どのようなメッセージを打ち出していくのかに注目が集まっていた。

フィリピンの経済にとって
唯一の希望は中国

 訪中前、中国中央電視台(CCTV)の著名キャスター・水均益氏がフィリピンの大統領府に赴き、ドゥテルテ氏をインタビューした番組が放映された。

 水キャスターは次のように問題提起した。

 「中国人はネット上で、なぜフィリピンの立場が突然変わり、ドゥテルテ大統領が対中政策で異なる立場を取るようになったのかに関心を示している。その中にはどの程度の誠意が含まれているのか?」

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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