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中国の理解不能な“膨張主義”がまかり通る3つの理由

嶋矢志郎 [ジャーナリスト]
2016年9月28日
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国際社会の働きかけも虚しく、南シナ海問題は中国による一方的な「力の支配」で押し切られようとしている。理解不能な中国の膨張主義がなぜまかり通るのか
Photo:首相官邸HP

 国際社会で非難の的になっている南シナ海問題が、中国による一方的な「力の支配」で押し切られ、封印されようとしている。日米中とASEAN(東南アジア諸国連合)など18ヵ国が参加して、9月8日に閉幕したアジア首脳会議をはじめ、世界の首脳がアジアに集結した一連の外交ラッシュで、最大の焦点であった南シナ海問題を巡る攻防が、中国側の事前の切り崩しや巻き返し工作が功を奏して、中国ペースで終始したためである。

 「法の支配」で中国を牽制し、圧力をかける日米両国の攻め手が不発に終わり、周縁の当事国側の抵抗も腰砕けで、提訴したフィリピンが一切言及せず、封印に手を貸した格好である。

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所が7月に国連海洋法条約に基づいて、中国の主権主張を全面否定した仲裁判決は、国際秩序を法的に守る最後の砦であったが、中国は「紙くずに従う必要はない」と強弁。引き続き国際秩序に挑戦する実効支配の手を緩めず、エスカレートさせている。

 中国の膨張主義、とりわけ海洋進出戦略は、今後とも拡大の一途を辿ることは必至である。東シナ海への攻略も明日は我が身であり、狙いは沖縄トラフ(海溝)にあることが明らかになってきた。日本を含め、国際社会は中長期的な戦略で中国の膨張主義と厳しく向き合い、国際秩序の中へ封じて、取り込んでいく必要に迫られている。

中国の「力の支配」に屈服?
南シナ海問題を巡る働きかけ

 一連の外交ラッシュを締めくくった東アジア首脳会議は、南シナ海での中国の主権主張を全面否定した仲裁裁判所の判決後、関係各国が顔を合わせる初めての国際会議であった。日本の同行筋によると、南シナ海をめぐる安全保障問題を議論して閉幕したが、日米両国が国連海洋法に基づく仲裁判決には法的拘束力があるとしてその受け入れを中国に迫ったものの、中国は反発、当事国間での解決を主張。参加各国からは南シナ海情勢を懸念する発言はあったものの、ASEANの当事国の代表からは中国を名指しで批判する声は出なかった。

 フィリピンのドゥテルテ大統領は、「仲裁判決の尊重」を主張するペーパーを用意、事前に配布していながら読み上げることもなく、南シナ海問題には言及しなかった。提訴した当事国のフィリピンの主張が宙に浮いてしまったため、日米両国の「法の支配」を砦に中国を強く牽制し、国際秩序の中へ取り込み、諌めていく絶好の機会を失したことは否めない。

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嶋矢志郎 [ジャーナリスト]

ジャーナリスト/学者/著述業。東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社(記者職)入社。論説委員兼論説副主幹を最後に、1994(平成6)年から大学教授に転じ、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授などを歴任。この間に、学校法人桐朋学園理事兼評議員をはじめ、テレビのニュースキャスターやラジオのパーソナリティなどでも活躍。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、経営戦略論など。著書・論文多数。


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